昨季は9人もの選手が務めた5番打者
2015年シーズンが開幕したが、ここまで、両リーグともに大方の予想を覆す展開となっている。パ・リーグでは優勝候補の一角・オリックスがわずか1勝止まりと開幕ダッシュに完全に失敗(4月5日終了時点)。昨季の日本一チーム・ソフトバンク、開幕5連勝を飾った西武を抑えリーグ首位に立つのは、ほとんどの評論家が3〜5位に予想していた日本ハムだ。
チーム防御率3.04と安定した投手力もさることながら、今季の日本ハムの強さは打線にある。もちろんまだ3カードを消化した時点の数字に過ぎないが、総得点51は12球団唯一の50点台でトップに立つ。
日本ハムは昨季も強力打線を誇るソフトバンクの607点に次ぐリーグ2位の593点を記録し、もともと得点力が高いチームではあった。その打線がさらに迫力を増したのにはどんな要因があるのか。
主要メンバーを見れば、小谷野栄一、大引啓次がFAで移籍し、フアン・ミランダが退団。今季から加入したのは田中賢介にジェレミー・ハーミッダ、ブランドン・レアードだ。田中はもちろん、この両助っ人が利いている。
昨季の打線を見れば、不動の4番・中田翔の他、夏以降には1番・西川遥輝、2番中島卓也、3番・陽岱鋼もほぼ固定されていた。ただ、5番に限れば、ミランダ、佐藤賢治、近藤健介、北篤、小谷野、大引、大谷翔平、ミチェル・アブレイユ、稲葉篤紀と、実に9人が務めた。
夏以降には大谷がDHで出場する場合には5番に起用されていたが、大谷が投手として出場した場合、あるいは欠場した場合には、クリーンアップを締めくくる重要な打者が日替わり状態だったのだ。これは、大谷に代わり5番打者を担う力量を持つ選手がいなかったことを裏付けている。
中田翔と陽岱鋼が本調子になれば……
もちろん、打線を固定することが勝つための最善策というわけではない。過去、猫の目打線で勝ち星を積み重ねたチームはいくらでもあるし、対戦相手に合わせオーダーを組み替えることも一理ある。しかし、打線が十分に機能していれば必然的に打順は固定されていくわけで、打線が固定されているという状態はやはり強いチームの一つの指標であることは間違いない。
リーグは異なるが、昨季、クリーンアップが固定されていたチームの代表格といえば阪神だ。打点王に輝いたマウロ・ゴメスの後で5番を担ったのがマット・マートン。来日初の首位打者を獲得したことに注目が集まったが、打点も84を記録しリーグ5位に食い込んだ。マートンがいるからこそ相手投手はゴメスとの勝負を避けられない。ゴメスの打点王獲得はマートンの存在あってのものであり、たとえゴメスが凡打に倒れたとしても高確率でマートンが走者を返していたということでもる。
日本ハムの場合、ソフトバンクやオリックスをしのぐ足があり、4番には昨季の打点王・中田がいる。5番打者によって「たたみかける得点力」を獲得できればより強力な打線を構築できるだろう。
今季、主砲・中田の後を担っているのが5番・ハーミッダだ。もともと長打力を評価されていたハーミッダはここまで打率.333、1本塁打、5打点と、5番打者として十分に機能している。さらに、6番・レアードも打率.273、2本塁打、7打点と打撃好調。キャンプ中から絶賛されている守備だけでなく、パンチ力のある打撃も他球団には脅威となりそうだ。
ちなみに、これまでのチーム内打点ランキングを見ると、トップの中田翔が8打点(リーグ3位)、レアードが7打点、岡大海が6打点、ハーミッダ、田中、陽が5打点、谷口雄也が4打点、中島が2打点、大谷ら4人が1打点と続く。打点こそ挙げてはいるものの、打率においてはそれぞれ低迷している陽と中田が本調子となれば……今季の日本ハム打線はソフトバンクに劣らぬ強力打線となりえる。
文=清家茂樹