高校までは「注目選手」ではなかったドラ1ルーキー
一昨年、昨年と2年連続でCS進出を果たした広島。今年は黒田博樹がMLBから復帰するなど戦力充実、優勝も狙えると期待が高まっていた。ところが……シーズンが始まってみれば波に乗れず。開幕カードは2勝1敗と勝ち越したものの、そこから7連敗。その後もなかなか連勝できないまま、阪神と最下位争いの位置にいる。
若い選手が多い広島で起爆剤の一人となってほしいのが、ドラフト1位ルーキー・野間峻祥だ。競争が激しい外野陣の中でレギュラー獲得には至っていないが、グラウンドに立てば華のあるプレーを披露する選手である。
野間は1993年1月生まれ、兵庫県出身。1992年生まれの選手、広島でいえば中崎翔太らと同学年にあたる。中学時代は、硬式の神戸須磨クラブ(ヤングリーグ所属)でプレー。専用球場があるという恵まれた環境のなか、練習を重ねた。チームは野間が2年生のとき、春と夏の全国大会に出場し、夏は準優勝。3年夏の全国大会ではベスト8進出。1学年下には現在のチームメート、左腕の戸田隆矢がいた。プロ入りは後輩の戸田が先で複雑な思いもあるのではと想像したが、まったくの杞憂。広島への入団が決まると戸田から野間に連絡が入り、喜び合ったそうだ。
中学卒業後は、神戸村野工業高校に進学。甲子園出場経験もある学校だが、在学中は甲子園に届かなかった。3年夏の県大会は4回戦敗退で、高校野球を終えている。
当時の野球雑誌などで、近畿地区のプロ注目選手として取り上げられていたのは、投手では岡本健(神戸国際大附属高→かずさマジック→ソフトバンク)、内野手では西川遥輝(智辯和歌山高→日本ハム)、外野手として中村奨吾(天理高→早稲田大→ロッテ/現在は内野手)など。隣の東海地区では現在のチームメート・磯村嘉孝(中京大中京高)が紹介されているが、野間の名前を見つけることはできなかった。
高校卒業後は、岐阜県にある中部学院大学に進学。菊池涼介の出身校である中京学院大学と同じ、東海地区大学野球連盟・岐阜県リーグでプレーした。
1年春からレギュラーとなった野間は、3年春以降の4シーズンで打率4割以上を3回マーク。リーグ通算打率.416を残している。3年生のときは、全日本大学野球選手権に出場。初戦から3打数2安打と結果を残したが、チームは延長戦で福岡大学に敗れた。このとき福岡大のキャッチャーだったのが、梅野隆太郎(現・阪神)である。中部学院大は、同年秋の明治神宮大会、4年秋の明治神宮大会にも出場。4年秋の神宮大会初戦では4打数3安打1打点の活躍で、エース・浜田智博(現・中日)を擁する九州産業大学を倒し、ベスト8進出。全国の舞台で実力をアピールした。
自分らしい打撃でチャンスをつかめ!
俊足・強肩・強打の外野手として知れ渡った野間は、「2014年のドラフト候補の外野手では1、2を争う身体能力」「走攻守に飛び抜けた潜在能力で野球カンも鋭い」「高いレベルに置くほど輝く天才タイプ」と絶賛されることが多くなった。迎えた2014年秋のドラフトでは、地元出身の有原航平(早稲田大→日本ハム)を外した後ながら広島が1位指名。背番号37は若き日の緒方孝市監督がつけていたもので、大きな期待の表れである。それについて聞かれると、「うれしい気持ちもあるし、プレッシャーもあります。走攻守そろったリーグを代表する選手になりたいです」と力強くコメント。同時に「開幕1軍」を目標と掲げた。
春のキャンプを経て、オープン戦では苦しみながらも「12球団新人最速ホームラン」を放つなどして開幕1軍入り。3月27日のヤクルトとの開幕戦では、代走としてプロ初出場を果たした。延長10回に迎えたプロ初打席はセカンドフライに終わったが、本拠地・マツダスタジアムでプロの第一歩を踏み出した。
第3戦では1番・ライトとして初スタメン。5打数2安打と結果を残したものの、最後の2打席で2三振。その後も打撃で結果を残せず、レギュラー定着には至らなかった。4月2日のDeNA戦、4月18日の中日戦ではマルチ安打ながら、最後の打席はいずれも三振。どちらの試合後も「最後に打たないと……」と本人が悔やんだように、そのあたりの粘り強さが今後の課題といえるだろう。それでも、4月19日の中日戦では、ドラフト2位ルーキーの浜田から、公式戦での「12球団新人最速ホームラン」。グラウンドに立てば話題を振りまき、やっぱり「持っている」と思わせる。
広島の外野陣はセンターの丸佳浩に、ロサリオとシアーホルツという外国人二人の布陣。現状は代打で結果を残していくしかない状況だ。浜田から放ったプロ1号は「フェンス直撃かと思ったけど、入っちゃいました」というライナー性の打球で、野間の持ち味といえるもの。低い弾道で外野を抜く打球を飛ばし、50メートル5秒7の快足で二塁打、三塁打にする――。そんな姿をたくさん見せてほしい。
期待のドラ1ルーキーの輝きと共に、チームが息を吹き返していく。鯉の季節を目前に控えたファンは、それを待ち望んでいる。
文=平田美穂(ひらた・みほ)