『俺たちの時代』を語りつくそう~90年代・4月の月間MVP受賞投手ランキング~
5月8日、4月の月間MVP(最優秀選手)が発表された。プロ野球セ・パ両リーグの投手と野手をひとりずつ、合計4人が選手されるこの賞で、特に目を引いたのはセ・リーグの投手部門で新人の高木勇人(巨人)が選出されたことだ。
セ・リーグの新人では、98年の小林幹英(広島)以来となる2人目の受賞という快挙を聞けば、それ以外はどのような投手が4月にこの賞を獲得してきたのか知りたくなるというもの。
そこで今回は90年代に受賞した、「4月の月間MVP投手」に注目。獲得回数が多かった投手をランキングにして紹介していこう。
“投げるレジェンド”山本昌の3度受賞に敬礼
受賞回数がもっとも多かったのは、山本昌(中日)の3度だ。さすが投げる“レジェンド”。過去にもこの「90年代ランキング」に何度か登場している左腕だが、93、94、99年の最多受賞には敬意を払わなくてはならない。ということで、問答無用の第1位としたい。
続いて、第2位は2度受賞している小宮山悟(元ロッテ他)とした。当時のロッテは95年にボビー・バレンタイン監督就任による大躍進でシーズン2位になったことがあるものの、それ以外はすべてBクラスで下位の常連だった。その状況において、小宮山が4月に2度受賞していることは大変意味がある。
下位チームが開幕から出遅れてしまったら、自力に勝る上位チームを相手にあとから巻き返すのは難しい。その意味において、4月の奮闘はチームメイトやファンに希望を与えたに違いない。
そして、ロッテの4月の功労者は、実は小宮山だけはなかった。それが、同じく90年代に2度この時期の月間MVPを受賞した河本育之の存在である。
特に92年の新人時代の快刀乱麻のピッチングは、今でもファンの脳裏に強烈に残っている。そんな河本を3位とした。
この年、本拠地を川崎から千葉に移転したロッテは、開幕のオリックス戦こそ星野伸之に完封負けを喫したたものの、2戦目は長らく故障に悩んでいた牛島和彦が開幕2戦目に3年ぶりの完投勝利を収めて盛り上がった。
そこで迎えた3試合目のダイエー(現・ソフトバンク)戦。1点を追う7回表からマウンドに上がった河本は、打者9人中、3番佐々木誠、9番湯上谷宏を除く7人から三振を奪う快刀乱麻のパーフェクトピッチングを見せたのだ。この試合はそのまま1点差で敗れたため、河本に成績はつかなかったが、奪三振ショーの模様は夜のスポーツニュースで大々的に放送された。
そして、河本は抑えに定着し、4月は2勝4セーブ、失点ゼロという成績を挙げ、ロッテは4月29日に一時単独首位に浮上の快進撃。打撃で活躍した青柳進捕手とともに、同一チームで4月の月間MVPダブル受賞となったのである。
ロッテは当時のパ・リーグでBクラスの常連であったことは先述したとおりだが、開幕直後は結構強かったという印象は確かにある。小宮山と河本の2度の受賞は、それを裏付けるものと言えるだろう。
また、パ・リーグでは、今回紹介したロッテの2投手のほかに、日本ハムの柴田保光や西崎幸広、金村暁。ダイエーの吉田豊彦ら、90年代はシーズンを通じて下位に沈むことが多かったチームの投手が受賞していることに面白さがあった(各1回ずつ)。
開幕直後は、「今年こそ!」という想いで奮投していたパ・リーグの「サムライエース」をこの場で改めて讃えておきたい。
文=キビタキビオ(きびた・きびお)