あまり大きく報じられなかった巨人のGM交代劇
DeNAに次いでセ・リーグ2位につけている巨人が11日、原沢敦専務取締役球団代表・ゼネラルマネージャー(以下GM)兼編成本部長のGM兼編成本部長職を解き、後任に読売新聞本社運動部長の堤辰佳が就任すると発表した。
球団は「リーグ4連覇ならびに日本シリーズ優勝を達成するために、編成体制を緊急に強化することが必要だと判断した」とコメントを出したが、シーズン中に編成部門のトップが変わる異例の事態である。堤新GMは、慶応大野球部で主将を務めたことがあり、広報部長やGM補佐など要職を歴任してきた人物。
GM職を改めて説明するまでもないだろうが、一言でいえばチーム編成の最高責任者である。チームの編成や戦略の決定、契約交渉、トレードやドラフトなどでどんな選手を獲得するか。そういったことを決定するのがGMである。
今回の巨人のGM交代劇はあまり大きく報じられていないが、MLBでシーズン中にGMが交代すると大きく報じられる。このちがいは、GM制度の浸透しているアメリカとそうではない日本の差からくるものだろう。
MLBは全球団にGMがいる。シカゴ・カブスのセオ・エプスティーンは肩書こそ「編成部門総括責任者」だが、実質的にはGMだ。映画『マネーボール』の主人公になったビリー・ビーンGM(オークランド・アスレチックス)のように、名物と言えるGMも存在する。また、近年ではセイバーメトリクスをはじめとしたデータを重視するタイプと、旧スタイルでチームを構築するタイプに分かれるなど、色々な特徴を持った人物が多い。広報やマーケティングなど球団内で実務経験を積みGMまで登り詰めた人もいれば、名門大学を卒業し、MBAなどの資格を持ち、20代の若さでGM職に就く人もいる。
また、野球をまったく経験していない人物がGMに就くこともあり、選手としても活躍したGMは少ない。今季からアリゾナ・ダイヤモンドバックスの新GMとなったデーブ・スチュワートは通算168勝をあげた名投手だが、これは最近では珍しいケースといっていい。
役割分担が明確なアメリカとそうではない日本
一方、日本のプロ野球でGMに就いているのは前出の堤のほかに、日本ハムの取締役チーム統轄本部長兼GMの吉村浩、阪神の中村勝広GM、中日の落合博満GM、DeNAの高田繁GMの計5人だ。西武の渡辺久信シニアディレクターや、ヤクルトの小川淳司編成部シニアディレクターも肩書こそちがうが、実質的にはGMだろうか。ほかの球団も、編成部長、本部長がGMのような役割を果たしているが、編成のトップが誰なのかいまいちはっきりとわからない球団もある。
MLBではGMが様々な決定権を持ち、監督はGMの方針に従う中間管理職のような立場で、役割分担がはっきりとしている。一方、日本のプロ野球では監督が編成に携わることもあり、監督によってはGMに近い役割を担う人もいる。日本ではドラフト会議がひとつのイベントとなっているという点も、監督が編成に意見する流れを生んでいるのかもしれない。
日米の野球における歴史も違うし、考え方が違う部分もある。そんなことからも、MLBのように役割をはっきりさせるべきとも思わないが、ここ数年、日本でもGM職に就く人が増えてきたこともあり、今後どのような流れを作っていくか注目してみたい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)