コラム

カブスが“怪物”のデビューを遅らせたワケ…ちょっと不思議なMLBの契約の話

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晴れてメジャーデビューを果たしたカブスのクリス・ブライアントですが、開幕前には一騒動ありました…[Getty Images]
クリス・ブライアント ,

マイナーで年間43本塁打の怪物も、デビューは開幕から12日後...


 巨人の高木勇人がデビュー戦から5連勝すれば、DeNAの山崎康晃は新人記録となる9試合連続セーブ。野手も、DeNAの倉本寿彦や広島の野間峻祥、楽天の福田将儀もチームに欠かせない存在となりつつあり、日本ハムの浅間大基は高卒ながらデビュー戦から4試合連続でヒットを放つなど、新人の活躍が目立つシーズンとなっている。
 
 メジャーリーグでも今季、大きな注目を集めた新人がいた。シカゴ・カブスのクリス・ブライアントだ。

 2013年、サンディエゴ大3年のときにアメリカ国内の大学生で最多となるシーズン31本塁打を記録したブライアントは、同年のドラフトでカブスから1位指名を受け、球団史上最高額の契約金約8億円でプロ入りした。

 メジャーではドラフト後すぐにメジャーの試合に出場することは稀で、まずはマイナーリグの試合で腕を磨く。そのため、ドラフト直後のシーズンが新人というわけではなく、メジャーデビューしたときが新人という扱いになる。

 ブライアントは昨季、2Aと3Aで計138試合出場し、マイナー全体で最多となる43本塁打を記録した。今季の春季キャンプでも14試合で打率.425、9本塁打と圧倒的な打撃を見せ、開幕戦からのメジャーデビューが期待された。

 しかし、カブスのエプスタイン球団社長の意向もあり、3Aからの開幕となる。

 メジャーリーグには「サービスタイム」という実働期間を計測する指標があり、1シーズンを172日としてカウントし、メジャーで6シーズン過ごすとFA権が取得できるという仕組みがある。

 ブライアントの場合、最短で2020年にFA権取得となる計算だが、あえて開幕から12日遅れてブライアントをメジャーデビューさせることで、サービスタイムを1日だけ満たすことができず、カブスはブライアントをもう1年保有できるようになるというわけだ。

日本ではマイナスのイメージがある年俸調停もMLBでは一般的

クリス・ブライアント ,
 もうひとつ、理由をあげるならば、年俸調停権の獲得を遅らせるためだろう。

 大物選手に対し、球団はFA権を取得する前に長期契約を結ぶのは一般的だ。メジャーデビューから3年は、どれだけ好成績を残しても、長期契約をしない限り、年俸は低めに抑えられる。

 3年プレーすると、選手は年俸調停権を取得できるが、この権利もサービスタイムによって計算される。年俸調停は大幅に年俸を下げることはできないため、基本的に年俸が下がることはなく、ほとんどの場合上昇する。そのため、調停権の獲得を引き伸ばせば、球団はよりリーズナブルに長期契約を結ぶことが可能になる。

 日本の場合、年俸調停と聞くとかなり選手側にとってネガティブなイメージだが、メジャーでは一般的な方法である。2014年のオフには、2回目の年俸調停権を得たボストン・レッドソックスの田沢純一の代理人が、年俸調停申請の締切日まで交渉を重ね、田沢の年俸を上積みさせた。

 こういったケースを先延ばしするために、カブスはブライアントのデビューを遅らせたと考えられる。メジャーの選手会が、「野球界にとって最悪な日だ」と抗議の表明を出したように、ブライアントのデビューを待っていたファンの気持ちを無視したカブスの作戦とも言えるが、これもメジャーリーグの一面である。

文=京都純典(みやこ・すみのり)
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