退団は、戦力外よりも育成契約への切り替えに近い措置だった
テキサス・レンジャーズは24日、退団が決まっていた藤川球児投手が手続きを終え、正式に自由契約になったと発表した。これにより、藤川は日本のプロ野球も含め、すべての球団と入団交渉が可能になったわけだが、改めて退団の経緯について振り返ってみよう。
レンジャーズは若手のリリーフ投手をメジャーに昇格させるため、メジャー契約だった藤川に対しマイナー契約への切り替えを打診した。メジャーでプレーできる40人枠を空ける必要があったからだ。しかし、藤川の契約に「本人の同意がなければ切り替えはできない」という契約事項があったため、一旦は藤川がメジャーに昇格。
今季初登板となった14日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦では1イニングを三者凡退に抑えたが、15日のクリーブランド・インディアンス戦では2/3回を投げ、本塁打を含む2安打3失点と打ち込まれた。藤川がレンジャーズの期待を上回る結果を残せなかったため、17日にレンジャーズは藤川をメジャーでプレーできる40人枠から外すと発表した。
このことに関し、藤川が戦力外通告を受けたといった報道もあったが、日本の戦力外通告とは少々異なる。
今回の藤川のケースは「DFA(Designated For Assignment and put on waivers)」というもので、前述のように別の選手をメジャー40人枠に入れるために、枠を空けるものだ。レンジャーズがマイナー契約への切り替えを打診したわけだが、日本のケースに当てはめるなら「育成契約への切り替え」という意味合いが近い。
「現状、あなたはメジャーの戦力としては計算できませんが、もう一度マイナー(育成枠)からやり直してみませんか?」といったものだ。
奪三振率が落ち、コンタクト率が上昇している現状が心配
DFAとなった選手に対しては、10日間以内に以下のうちいずれかの手続きがとられる。
まず、ウェーバーにかけられる。ウェーバー公示期間中に他球団が獲得の意思を示し、交渉が成立した場合、契約内容をそのまま引き継ぐ形で選手は移籍する。ウェーバーの場合は、DFAから7日以内に公示しなければならないというルールもある。
2番目のケースは、トレードだ。ただし、メジャー在籍が10年以上で現在のチームに5年以上在籍している選手は拒否することもできる。藤川は、このケースには当てはまらない。
3番目のケースは、マイナー契約への切り替え。所属球団からマイナー契約の申し絵がなかった場合や、選手がマイナー契約を拒否した場合、自由契約となる。選手側に拒否権がないのが一般的だが、前述通り藤川は契約事項に拒否権が盛り込まれていた。そのため、レンジャーズは藤川を自由契約(フリーエージェント)にしたと発表したというわけだ。
以上のような経緯で藤川は自由契約となったわけだが、藤川の状態はどのようなものだろうか。
速球、カーブ、スプリットの割合はメジャー3年間で大きな変化はない。イニング数は少ないものの、奪三振率は昨季の11.77から今季は5.40に低下。3Aでも7.71と三振を多く奪えていない。
奪三振率の低下よりも気になるのがコンタクト率の上昇だ。相手打者が藤川の投球をどれだけバットに当てることができたかを示すコンタクト率が、2013年は73.7%、昨季は72.1%だったが今季は90.9%。奪三振率と同様、イニング数が少ないとはいえ昨季までと比べ、明らかにとらえられやすくなっている。火の玉ストレートともいわれた全盛期は150キロを記録したが、今季は145キロ前後とスピードが落ちている点も心配だ。
アメリカで挑戦し続けるのか、それとも日本球界復帰か……。藤川がどのような決断をするかまだわからないが、球史に残るリリーバーの復活を願うばかりである。
文=京都純典(みやこ・すみのり)