逆襲を狙うオリックスの「1番・セカンド」に熱視線!
セ・パ交流戦が始まった2015年のプロ野球。セ・リーグでは「最下位候補」の声が多かったDeNAが首位に立ち、パ・リーグでは「優勝候補」の呼び声高かったオリックスが最下位。いまだ波に乗れていないが、交流戦での巻き返しを狙っている。
そんなチームの打線で1番・セカンドとして、ハツラツとしたプレーを見せているのが西野真弘。今年25歳を迎えるルーキーである。規定打席には到達していないが、打率.331(5月31日現在)をマーク。このまま規定打席に到達したら……、と期待を集めている。チーム最低身長の167センチながら、安達了一と組む二遊間守備には安定感があり、二塁手として28試合(三塁手として7試合)無失策を記録中だ。
西野は1990年8月生まれ、東京都出身。江戸川区立南葛西小学校時代は「葛西キラーズ」に所属。江戸川区立南葛西中学校では、硬式クラブ「浦安リトルシニア」に所属。チームは3年夏に全国大会出場を果たし、2回戦敗退。大会注目選手の中に西野の名前はなく、近田怜王(兵庫・三田リトルシニア/ソフトバンク→現・JR西日本)、土屋健二(静岡・富士リトルシニア/現・DeNA)らの名前がある。
中学卒業後は、東海大学付属浦安高校(千葉)へ。2年夏の千葉県大会5回戦では、超高校級右腕・唐川侑己(現・ロッテ)を擁する成田高校と対戦。1番を任されていた西野は、初回先頭打者安打を放っている。チームは延長戦で成田高を破って注目を集めたが、準決勝で敗退。西野が3年となった夏は、記念大会で千葉が東西に分かれるチャンスに恵まれるも、西千葉大会ベスト8。甲子園には届かなかった。なお、同学年の高校生野手でドラフト候補とされていたのは、大田泰示(東海大相模高→巨人)、上本崇司(広陵高→明治大→広島)、橋本到(仙台育英高→巨人)などだ。
高校卒業後は、千葉県大学野球連盟に所属する国際武道大学へ。下級生から内野のレギュラーとなり、4年生のシーズンは春、秋ともリーグ優勝。いずれも打率3割以上をマークし、二塁手のベストナインに連続選出された。しかし、6月の全日本大学野球選手権は、1回戦で大累進(現・巨人)を擁する道都大学に敗退。同大会では、準優勝で敢闘賞を獲得した東浜巨(亜細亜大→ソフトバンク)、初戦敗退ながら特別賞を受賞した則本昂大(三重中京大→楽天)らが注目を集めた。秋の明治神宮大会も初戦敗退。1番・セカンドとして3打数1三振という成績で大学野球を終えた。
目標の人を越えた先に「新人王」が見えてくる!
飛躍したのは、社会人の強豪・JR東日本に入社後。1年目からセカンドのレギュラーとなり、二遊間を組んだのは1学年上の田中広輔(現・広島)。チームは昇り調子で、入社1年目の2013年に都市対抗野球準優勝。日本選手権は2回戦敗退ながら、同年の社会人ベストナインに選出された。翌2014年は、都市対抗、日本選手権ともベスト8。社会人で構成された日本代表の一員として、9月に行われた仁川アジア大会に出場。銅メダルを獲得した。
迎えた2014年秋。この頃にはドラフト候補として「50メートル5秒台の俊足が光る」「走攻守とも1年先輩の田中広輔より上」という評価はあった。しかし、指名は7巡目。チームメートの坂寄晴一が、同じオリックスの6巡目指名を受けた後だった。牧田勝吾スカウトは「小さいけれど、ガッツあふれるプレーと走力でアピールしてほしい。プレースタイルは平野恵一と似ているので、いいところをマネして追い越してほしい」とコメント。西野本人も、目標の選手を問われると平野の名前を挙げ、「僕と同じで背は高くありませんが、非常にガッツがあり、守備でも攻撃でもチームに流れを引き込める選手だと思います」と語っている。
開幕一軍を勝ち取り、4月2日のソフトバンク戦でプロ初出場。4月12日の楽天戦では初スタメンで初安打。4月29日の楽天戦ではプロ初本塁打。ルーキーとして非常に順調といえる目の前に立ちはだかるのは、目標であり同タイプである平野。セカンドとしての出場試合数、守備機会ともに、まだ平野がリードしている。
入団会見では、「全力プレーとチャンスメーク、チームの勝利につながる状況に応じたバッティングには、自信があります」と語った西野。憧れの人を越えてレギュラーをつかんだ先に見えてくるのが、新人王のタイトルである。甲子園出場経験なし、大学から社会人を経てのプロ入り、ドラフト7巡目からの「下克上」なるか――。逆襲を狙うオリックスに潜むドラマを、決して見逃さないようにしたい。
文=平田美穂(ひらた・みほ)