パ17年ぶりの野手新人王誕生なるか
今、プロ野球界は1998年以来の快挙に向けて盛り上がっている。17年ぶりの優勝を目指しセ・リーグ首位を走るDeNAベイスターズ。そして、パ・リーグでは同じく17年ぶりの野手新人王候補の出現だ。
近年は圧倒的に投手有利のNPB新人王レース。野手の新人王受賞者はセ・リーグでは10年の長野久義(巨人/外野)が最後。パ・リーグでは驚くべきことに98年受賞の小関竜也(西武/外野)以降、すべて投手が受賞している。
そんな中、オリックスで鮮烈なデビューを果たしたのが167センチの小さな大打者・西野真弘である。JR東日本からドラフト7位で入団した24歳のルーキー。社会人時代は田中広輔(現広島)と二遊間を組み、二塁手としてベストナインも獲得。昨年は社会人日本代表にも選出された。
好きな野球マンガはあだち充の「H2」と公言する“マサヒーロー”。春季キャンプでは、チームを視察中の侍ジャパン小久保監督が西野のバッティングを絶賛したのも記憶に新しい。
そして、西野本人の「守備より打撃に自信がある」という言葉通りに、開幕一軍を勝ち取ると現在33試合に出場。規定打席には足りていないものの94打数34安打の打率362、3本塁打、18打点、5盗塁、OPS.977の好成績。さらに得点圏打率480と驚異的な勝負強さを発揮している。
小柄ながらパンチ力も併せ持ち、リードオフマンとして最下位に喘ぐチームを鼓舞し続ける背番号39。現在リーグ首位打者が柳田(ソフトバンク)の.356、規定打席まであと5打席の清田(ロッテ)は.355、西野はさらにそれを上回るハイアベレージである。
2リーグ制後の新人3割打者は過去にたったの8名。最高打率は元阪神の坪井智哉で.327。奇しくも、この打率も1998年に記録されたものだ。坪井や高橋由伸、そして川上憲伸らが凌ぎを削った新人王レース。
あれから17年。坪井の持つ新人最高打率を更新すれば、西野の17年ぶりのパリーグ野手新人王獲得も現実味を帯びてくるだろう。さらにドラフト7位入団の新人王は、97年の元ロッテ・小坂誠(ドラフト5位)を抜き、パ野手史上最大の“下克上新人王”の誕生となる。
今シーズン、西野真弘はあらゆる新人記録を塗り替えることになるかもしれない。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)