コラム 2015.06.29. 11:20

センバツ優勝&ドラ1左腕の逆襲 不動のセットアッパー・田中の球歴とは?

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セットアッパーに成長したDeNAの田中健二朗 ©BASEBALLKING
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DeNAを支える左のセットアッパー


 開幕から絶好調で首位争いをくり広げていたDeNA。しかし、徐々に勢いが衰え、交流戦では3勝14敗1分と大敗を喫した。交流戦からの連敗は12まで続き、リーグ戦再開後の2カード目の巨人戦でようやく2連勝。幸いなことに、「貯金0で首位」となった巨人を含めて抜け出すチームもなく、優勝の可能性は十分残している。

 DeNA好調の要因のひとつだったのが、投手陣の充実である。昨年、大ブレイクした井納翔一ら先発陣にメドが立ち、中継ぎ陣も安定。さらに、抑えとしてルーキー・山崎康晃が大活躍。先発から抑えにという形ができた中、左の中継ぎとして欠かせない存在が、プロ8年目の田中健二朗だ。

 田中は1989年9月生まれ、現在25歳。2007年春、常葉学園菊川高校(静岡)のエース左腕としてセンバツ優勝を果たしているが、生まれ育ったのは愛知県。中学時代は、硬式クラブ・新城ベアーズ(ボーイズリーグ)でプレーした。

 進学した常葉菊川高で出会ったのが、元・中日の選手だった佐野心部長(1991年ドラフト6位で入団し、95年退団)。佐野部長が「二人三脚で練習してきました」と振り返る日々を送った。当時の専門誌には、「インコースやアウトローに投げる練習をさせたことは、一度もありません。すべて、ど真ん中に投げる練習。田中は練習の最後はいつも、『10球連続ど真ん中』をやっていました」というユニークな練習法が明かされている。なお、これは、「ど真ん中に投げる練習をすることで、ヒジの位置、体のひねりなど、投球フォームとしていいものができてくる」といった考えもあってのこと。「力の限り投げたボールが確実にど真ん中にいくようになれば、コーナーを突くこともできるようになる」という。

 エースとなった田中は3年春、2007年センバツで優勝するのだが、倒した相手がすごい。1回戦は、佐藤由規(現・ヤクルト)がエースの仙台育英高校(宮城)。2回戦は、熊代聖人(現・西武)がいた今治西高校(愛媛)に17奪三振完封。準々決勝では、中田翔(現・日本ハム)がいた大阪桐蔭高校。怪物・中田に対してはストレート主体の力のピッチングで、3打数無安打に抑え込んだ。決勝戦は、同じ東海地区のライバル・大垣日大高校(岐阜)に勝利。大会を通じて、バントをほとんどやらない「ノーバント戦法」が光り、初優勝を飾った。なお、春夏連覇が期待された2007年夏の甲子園は、準決勝で野村祐輔(現・広島)と小林誠司(現・巨人)がバッテリーを組む広陵高校(広島)に敗戦。優勝は「がばい旋風」の佐賀北高校だった。


プロ8年目、優勝に欠かせないキーマンとして開花!


 大学生・社会人と高校生を分けて行われた、2007年秋のドラフト。高校生では「BIG3」といわれた佐藤由規、中田翔、唐川侑己(成田高→ロッテ)が1位指名を受けた。センバツ優勝投手の田中は、佐藤を抽選ではずした横浜(当時)が、さらに高浜卓也(横浜高→阪神→ロッテ)もはずし、「はずれはずれ1位」での指名となった。

 プロ1年目の2008年は、肩痛のため一、二軍とも登板なし。翌年も二軍で過ごし、3年目の2010年、一軍デビューを果たした。9月11日、ナゴヤドームでプロ初登板。1イニングを三者凡退に抑え、「緊張して足がプルプル震えました。投げられたことが収穫です」とコメント。4日後の9月15日、初先発初勝利。「ここまで長かったけど、これからもこういう投球をしたいです」と明るく語った。

 しかし、昨年までのプロ7年間で、41試合、2勝4敗0セーブ。2013年の秋季練習、一人ずつの声出しでは「左がいないと言われていますが、ここにいるじゃないかという思いです!」と叫んだが、先発でもリリーフでも、結果を残せずにいた。

 昨年は、初の開幕一軍をつかんだが、インフルエンザで3月末に二軍降格。「左がいない」チームを救うことはできなかった。それが9月以降、9試合で10回を投げて防御率0.00。「指にしっかりかかって、力の伝わったボールが多く投げられるようになった」と手応えを得たという。

 迎えたプロ8年目の2015年。2月末に母親を亡くした悲しみを乗り越え、不動のセットアッパーとして躍動。一打同点の場面でも、ストレートで押して打ち取れるようになった。6月28日時点で32試合、30回3分の1を投げて、2勝2敗1セーブ、17ホールドポイント、防御率2.08。今季初勝利は5月10日、母の日に転がり込み、「いい報告ができます」と静かに喜んだ。

 DeNAにとってはここからが、再び首位争いに絡めるかどうかの正念場。貴重な左のセットアッパーとして、田中健二朗は投げ続ける。

文=平田美穂(ひらた・みほ)
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