リーグトップ20ホールドに防御率1.01と安定感抜群!
シーズンの折り返し地点を目前に阪神がセ・リーグ首位に立った。どのチームも決め手を欠き、まれに見る混戦の中、先月中ごろには最下位だった阪神を押し上げた要因のひとつはベテラン右腕・福原忍の存在だ。
打撃ではあらゆる指標でリーグの下位に沈むチーム。ようやくメッセンジャーら先発陣にも安定感が見えてきたが、先発防御率3.45はリーグ4位と決して褒められたものではない(6月28日終了時点)。
では、救援陣はどうかといえば、こちらはもっと悲惨だ。救援防御率は4.53と、リーグ唯一の4点台でダントツの最下位。かつて福原と並び活躍した安藤優也は防御率5点台。期待の若手・松田遼馬も防御率4点台と打ち込まれる場面が目立つ。
中継ぎ陣が崩壊している中、福原はひとり気を吐く。20ホールドは田中健二朗(DeNA)、マシソン(巨人)、又吉克樹(中日)の15ホールドを抑えリーグトップだ。防御率1.01という抜群の安定感で勝ちゲームのバトンを呉昇桓へと確実につないでいる貢献度は計り知れない。
待たれる生きのいい若手中継ぎ投手の台頭
昨季の福原は42ホールドポイントで自身初のタイトル・最優秀中継ぎ投手を受賞した。しかし、2012年から2シーズン連続で1点台だった防御率は4.05と大幅に悪化。今年で39歳という年齢を考えても今季の福原の投球を不安視する声は少なくなかった。しかし、ふたを開けてみればこの完全復活である。
かつて150キロ台をばんばん記録していた急速は確かに落ちた。それでもいまだに140キロ台後半を記録するストレートが配球の7割弱を占め、しかも10%近い空振り率を誇る。
数字上で注目されることがそれほど多くないセットアッパーだが、日替わりで使い分けるチームではなく、福原のように役割が完全に固定されている場合には、振りかかるプレッシャー、求められる力量、そして勝利への貢献度はクローザーと大差ないと見ていい。呉昇桓が後ろに控えていることが大前提ではあるが、低迷する打線やいまひとつの投手陣を思えば、福原こそが首位浮上の立役者という見方もできる。
ただ、完全に不安が払拭されたかといえばそうではない。投手にシーズンの疲労の影響が現れるのは夏場以降だ。福原は昨季まで4年連続で50試合以上に登板しており、酷使された体がこれから悲鳴を上げることも大いに考えられる。
これからの厳しい戦いを思えば、時には福原に休息を与えることも必要だろう。そういったベンチワークも含め、阪神10年ぶりの優勝には、かつてのJFKのように、福原とともに呉昇桓へとバトンを渡す生きのいい若手の台頭がポイントになるかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)