“頼れる4番”新井の突出した勝負強さ
優勝候補の一角と目されながら、3、4月は9勝16敗と大きく出遅れた広島だが、5月以降は28勝25敗1分と復調(7月12日終了時点)。首位・巨人まで3ゲーム差と、Aクラス入りはもちろん、優勝を狙えるところまで持ち直している。
その原動力のひとりが新井貴浩だということは疑いようがない。新外国人・グスマンが開幕早々に故障で離脱し、シアーホルツの加入、エルドレッドの復帰、さらには主力の菊池涼介や丸佳浩が復調するまでの間、4番としてチームを支えてきた。
結果も伴っている。打率.295、41打点、出塁率.378はいずれもチームトップ。中でも得点圏打率.390は、2位・筒香嘉智(DeNA)の.337を大きく引き離し、ダントツのリーグトップである。本塁打こそ4本と、かつての本塁打王としては物足りないが、勝負強く頼れる4番としてファンの信頼も勝ち得ている。
今季から新井が復帰した広島は、2年連続でAクラス入りし、若手主体に生まれ変わったチーム。代打の切り札や若手のアドバイザーなど、縁の下の力持ちとしての期待はあったかもしれないが、ここまでの活躍は誰もが予想していなかっただろう。
夏場以降に調子を落とす近年の新井
しかし、ここにきて新井のバットが徐々に湿り始めている。7月の打撃成績は9試合の出場で32打数6安打、打率.188と、はっきり下降線を描く。
球史に残る大混戦となっている今季のセ・リーグは、球宴明けの真夏からが本番。しかし、年齢的な衰えからか、近年の新井は夏場に調子を落とす傾向にある。代打中心の出場だった昨季を例外として除くと、2011年以降3シーズンの8月月間打率は順に.209、.216、.235。
特に注目したいのは阪神でレギュラーとして出場した最後のシーズンである2013年。7月以降の月間打率は7月.282、8月.235、9月.229、10月.188。主力の好不調がチーム成績に直結するのは当然だが、新井の成績低下と比例して阪神は首位・巨人に一気に引き離されてしまった。
4番として4月から出場を続けてきた今季、38歳の新井にこれから疲労の影響が出てくる可能性は小さくない。ヤクルト打線に昨季ほどの迫力がなく、上位の巨人、阪神の打線も低調な今季、広島は打率や総得点でリーグトップに立つ。
そんなチームに大きく貢献してきた新井が不調に陥ったとき、そこに代わる打者が前半戦の新井のような“4番の働き”を果たせるか。これからの広島にとって、大きなポイントになるかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)