背番号8が東京ドームに帰ってきた。
片岡治大は右ふくらはぎの肉離れから復帰後、初の本拠地での中日3連戦を2勝1敗と勝ち越した。巨人は先月24日の広島戦で片岡が「2番セカンド」として戻ってきてから、9試合で7勝2敗と5つの貯金。片岡自身もその間、37打数13安打の打率.351、3打点、3盗塁と結果を残した。
4番を任せられていた亀井善行が右足首じん帯損傷で登録抹消。09年のWBC代表で出会った同級生の離脱に重く沈みそうなベンチを鼓舞する働きを見せている。良くも悪くも「軽い男」。空気を読まない片岡が戻ってくると、時にチームは息を吹き返す。西武時代の13年、故障から復帰した9月以降は19試合、打率.342、2本塁打、15打点とチームを牽引。熾烈なCS争いが続いた10月は、25打数10安打の打率.400、OPS1.043と驚異的な集中力を発揮した。
「08年の日本シリーズは、マークしてマークしてマークしたけれども走られた」
原監督が常々、そう絶賛する勝負度胸は今も健在だ。V4を目指す巨人は世代交代の真っ只中にいる。栄光の三連覇のど真ん中で支えていた30代中盤の阿部慎之助・村田修一から、新キャプテンの坂本勇人と現在4番を打つ長野久義の時代へ。その両世代を繋ぐのが、中間に位置する亀井と片岡の同級生コンビの役割になる。
試合になれば繋ぎ役だけでなく、時に勝負を決められる理想的な2番打者。今季は1カ月半近く故障で戦列を離れたものの、チームトップの15盗塁・20犠打。かと思えば、すでに5本塁打を放つ小力も併せ持つ。
確かに2015年の巨人打線は淡白だ。チーム打率.240は阪神と並んでリーグ最低。怖さもなければ、嫌らしさもない。だが、背番号8は嫌らしい。一発もあり、足もあり、繋ぎもできる。お立ち台では唐突に「皆さまありがとぅー!」なんて絶叫する明るさもある。片岡の存在で何度チームが救われたことか。
数年前の巨人は、定着できない2番打者と二塁手がチームの弱点だった。だが、最近は違う。
今の巨人のストロングポイントは、「2番セカンド」に片岡治大がいることである。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)