進撃の背番号23が止まらない。
ヤクルトスワローズ山田哲人。週末の神宮球場で4打数連続本塁打を放ち、31本塁打はキング独走状態。打率.3333も同僚の川端をわずかに7毛上回るセ・リーグ首位打者で、26盗塁も現在リーグトップ。79打点は2位でチームメイトの畠山を5差で追っている。NPB史上初の三冠王&トリプルスリーの同時達成も現実味を帯びてきた。
4年目の昨季、自身初の規定打席に到達すると、日本人右打者のプロ野球記録を更新するシーズン193安打を放ち大ブレイク。5年目の今季も恐るべき進化を見せる23歳だ。
山田は10年ドラフト1位指名選手だが、過去のレジェンドクラスプレーヤーの高卒5年目の成績と比較してみよう。
● 王貞治(巨人/63年)
140試 率.305 本40 点106 OPS1.092
→ 世界の本塁打王は初の3割・40本塁打・100打点を突破し、自身2度目の最多本塁打獲得。
● 張本勲(東映/63年)
150試 率.280 本33 点96 OPS.913
→ キャリア最多の年間150試合に出場し、球団史上初めてシーズン全試合で4番を務めた。
● 掛布雅之(阪神/78年)
129試 率.318 本32 点102 OPS.970
→ 自身初の30発・100打点を突破、三塁手としても初めてゴールデングラブ賞を獲得。
● 清原和博(西武/90年)
129試 率.307 本37 点94 OPS1.068
→ 自身最多の37本塁打を放ち、キャリア2度目の二桁盗塁(11盗塁)も記録。
● イチロー(オリックス/96年)
130試 率.356 本16 点84 OPS.926
→ 3年連続首位打者を獲得、8月にはプロ野球記録となる月間48安打を放つ。
● 松井秀喜(巨人/97年)
135試 率.298 本37 点103 OPS.984
→ 初の100打点突破、翌年に自身初の本塁打王と打点王に輝く。
高卒野手のプロ5年目は、肉体・技術ともに選手としてひとつの完成系へと近付く時期なのだろう。各選手、それぞれなんらかの「自身最多」や「自身初」の壁を突破している。そして、山田哲人も5年目の今シーズン、初めて30本塁打の大台をクリアし、各部門でキャリアハイの成績を記録することになるはずだ。
過去7人(11度)いる三冠王だが、20代での獲得者は29歳のシーズンの中島治康と落合博満の2人のみ。すでに打力では「NPB史上最強の二塁手」の呼び声も高い規格外の23歳は、今この瞬間だけでなく過去の偉大な記録とも戦っている。
90年代から10年代の野球界を牽引してきた松井秀喜はすでに引退し、天才・イチローも10月には42歳。野手のスーパースター不在と言われて久しい日本球界に出現した、松井・イチローの次の世代への継承者。
2015年は「山田哲人時代」の始まりとして、多くの人々に記憶されることだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)