秋季リーグで試験的に導入され始めたスライディングに関する規制
リーグチャンピオンシップシリーズに進む4チームが決まり、2015年のMLBもクライマックスを迎えているが、白熱した戦いのなかで大きな議論を呼んだプレーがあった。10日に行われたロサンゼルス・ドジャース対ニューヨーク・メッツの地区シリーズ第2戦で、ドジャースのチェース・アットリーが二塁にスライディングした際に、メッツのルーベン・テハダと激しく交錯。テハダが右腓骨骨折の重傷を負ってしまうほどの激しいスライディングだった。
MLB機構はこのプレーを重く見て、アットリーに2試合の出場停止を言い渡したが、アットリー側が故意に負傷させたわけではないと不服申し立てを行い、処分が確定されないまま、メッツが地区シリーズを勝ち抜いた。
近年、日本では本塁上の激しいタックルについて様々な議論が巻き起こるが、MLBでは昨季から本塁上での無用なタックルやブロックを禁止にした。長期離脱する捕手が相次いだためだが、実際に本塁上での激しいタックルは見られなくなった。
今回のアットリーのプレーに関しても、マンフレッドコミッショナーが全米紙のインタビューで、スライディングのルール改正を検討すると発言したため、来季から規制することが濃厚だ。実際、アリゾナ秋季リーグではスライディングに関する規定が試験的に導入されている。こういうとき、MLB機構の動きは非常に迅速だ。
過去、日本人選手も被害をうけた猛スライディング
過去、日本人選手も激しいスライディングの標的になったことがある。
2009年、当時タンパベイ・レイズに所属していた岩村明憲は、開幕から好調だったが、5月下旬のフロリダ・マーリンズ(現マイアミ)戦で二塁の守備についた際、激しいスライディングを受けて左ひざを負傷。前十字靭帯の部分断裂と診断され、約3ヵ月戦列を離れた。
2011年、ロッテからミネソタ・ツインズに移籍し、開幕戦でメジャーデビューを果たした西岡剛も、二塁上で激しいスライディングを受け左腓骨を骨折。その後復帰したものの、メジャー2年間で71試合の出場、打率は.215に終わっている。
日本人選手、とくに内野手がMLBに移籍する際、激しいスライディングに注意する必要があると言われるが、今後はこれまでのように不安視する必要はなくなるのだろう。
スピードやパワーだけでなく、激しいプレーはMLBの醍醐味とも言われる。しかし、今回のアットリーのようなスライディングは、ベースではなく明らかに選手に向かっている。併殺を防ぐプレーとはいえ、野手に向かってスライディングするのは本質から離れている気もする。「スライディングをかわすのも技術では?」という意見もあるようだが、送球体勢に入った状態でスライディングを受けてしまえばよけるのは困難だ。見どころのひとつとはいえ、ケガをする可能性が高いプレーは好ましくないだろう。
日本の試合で激しいスライディングはMLBほど見られないが、そういった議論を今のうちから十分にしておく必要は間違いなくある。
文=京都純典(みやこ・すみのり)