雄々しいマウンド姿と「かわいい」オフショットにギャップ萌え!
「世界野球WBSCプレミア12」も終わり、すっかりオフとなった日本プロ野球。改めて振り返ってみれば、パ・リーグはソフトバンクが独走で優勝。セ・リーグは大混戦の末、ヤクルトが14年ぶりの優勝。対照的な2チームが戦った日本シリーズは、ソフトバンクが4勝1敗と強さを見せつけて終わった。
セ・リーグは、CS進出をかけた3、4位争いも熾烈だった。3位・阪神、4位・広島のゲーム差は0.5。3年連続CS進出を狙った広島は、わずかな差に泣いた。
その広島で今季、守護神として定着したのが中崎翔太である。1992年8月生まれの23歳。2010年、ドラフト6位で入団した5年目の右腕だ。186センチ96キロのぽっちゃり体型ながら、マウンドでは相手をにらみつけ、雄々しい投球を披露。しかし、グラウンドを出れば、グーグルの検索候補に「中崎 かわいい」と出てくるほどの、典型的ないじられキャラ。そのギャップにハマるカープ女子も多いという。
中﨑は鹿児島県出身。小学生のとき、少年軟式チーム「財部サンデーズ」で野球を始め、5年生から本格的に投手を務めるようになった。曽於市立財部中学校に進学すると、硬式クラブ「都城リトルシニア」でプレー。2歳上の兄・雄太(西武)と同じ道のりをたどり、日南学園高校(宮崎)へと進学する。
日南学園高では2年秋からエースとなり、秋の県大会優勝。九州大会に進出するも、初戦敗退で春の甲子園を逃す。3年夏の県大会は準々決勝敗退。身近な目標である兄・雄太は2007年夏の甲子園出場を果たしているが、それに追いつき追い越すことはできなかった。ちなみに、中崎が3年の春、夏に甲子園を連覇したのが、トルネード左腕・島袋洋奨(現・ソフトバンク)がエースの興南高校(沖縄)である。
甲子園出場ならずも、186センチの長身から140キロを超えるストレートを投げ込む剛腕・中崎翔太の評価は高かった。そして、県内で双璧をなしていたのが、宮崎工業高校のエース・浜田智博(九州産業大を経て中日)。1学年下には武田翔太(宮崎日大高→ソフトバンク)がいて、宮崎県大会は超ハイレベルであった。さらに付け加えると、隣の鹿児島県には、1学年下に現在のチームメートである戸田隆矢(樟南高)がいて、武田とともに、翌年のドラフト候補として注目を集めていた。
2010年秋のドラフト、中崎翔太は広島の6位指名を受けた。この年は、大石達也(現・西武)、斎藤佑樹(現・日本ハム)、福井優也(現・広島)の「早大三羽烏」に、沢村拓一(現・巨人)、大野雄大(現・中日)など「88世代」の大学生が目玉。6位指名の中崎の話題といえば、兄・雄太との「兄弟選手誕生」がメイン。強いて探せば、ドラフト後、広島の秋季キャンプが行われていた日南市内の球場に、自転車で駆けつけて見学したというエピソードぐらいであった。
「先発にはこだわらない」――中継ぎ、そして、抑えとして躍進!
プロ1年目は一軍登板なし。2年目の2012年9月19日、ヤクルト戦で兄・雄太よりも先にプロ初先発。6回まで無失点ながら、7回、中村悠平への頭部死球で危険球退場という結末だった。3年目の2013年6月8日、西武戦で先発初勝利。最速149キロをマークし、7回2安打無失点。先発予定の前田が故障で登板回避しての代役で、チーム内の評価も高い1勝だった。しかし、この年は2勝止まり。悩まされてきた右手血行障害を緩和するため、オフに手術を受けることを決断した。
翌2014年6月、一軍に昇格して与えられた役割はリリーフだった。本人は「先発にこだわりはないです」と受け入れ、32試合に登板。毎日投げるための調整には難しさを感じたというが、安定したフォームを手に入れることにもなった。
プロ5年目の2015年は、開幕からリリーフに配置。4月中旬以降、抑えを任されるようになった。しかし、救援失敗が続く時期もあり、中崎がコールされるとスタンドからため息という状況も経験。「もうムリだ、投げたくないと思ったこともあります」と振り返るが、「自分が崩れたら、チームもダメになるんだ」と奮起。抑えの役割にも慣れて、最後は18試合連続無失点でシーズン終了。チーム1位となる69試合登板、29セーブ(リーグ4位)をあげ、新たな守護神として結果を残した。
チームはCS進出を逃して長いオフとなったが、中崎は休日返上で練習。「まだ、完全に信頼を勝ち取れたわけじゃないですから。やらなきゃいけないことは、まだまだあります」と話した。秋季キャンプではノースローを許され、基礎体力を強化。11月下旬は、1年間のオーバーホールが目的の「リハビリキャンプ」のメンバーとして湯布院温泉へ。先輩選手たちと露天風呂でくつろぐ姿が報じられたが、「来年は今年以上の結果を求めていかないと」と気持ちは来季に向かっている。
チームとしてリベンジを果たさなければならない来季。抑えの存在はもちろん欠かせない。まずは、今年の疲れを癒すこと。オフショットでは「かわいい」姿でファンを楽しませつつ、マウンドではパワーアップした姿を見せてほしい。
文=平田美穂(ひらた・みほ)