マリナーズが抱える課題とは…
2001年から遠ざかっているポストシーズンへ向けて、補強を続けるマリナーズ。ジャイアンツをFAとなった青木宣親に加え、今季ブリュワーズで20本塁打を放ったアダム・リンド、2013年から2年連続30盗塁以上のレオニス・マーティンなど、打者のアップグレードに成功した。
今回獲得した3人の共通点は、いずれも左打ちであるということ。この結果、来季は現在レギュラーが想定される9人のうち、実に6人が左打ちということになる。
リンドは左投手にめっぽう弱く、通算166本塁打のうち145本が右投手から放ったもの。今季の20本塁打も、すべて右投手から放っている。通算の打率でも対右の.293に比べ、対左は.213と数字を大きく落としている。
マーティンも通算打率で対右.263/対左.233となっており、左をやや苦にしている印象だ。
青木、マーティンとともに外野の一角を担うスミスも、サウスポー相手の通算打率が.205(対右は.274)と打てておらず。中軸を担うロビンソン・カノとカイル・シーガーも今季こそ左右関係なく打ったものの、本来は左を苦手とするタイプであり、来季のマリナーズ打線は左投手への対策が大きな課題となりそうだ。
弱点にピンポイントな青木の獲得
実は、今季も左投手に苦しんでいたマリナーズ打線。
相手チームの先発投手が右投手だった場合、54勝54敗と五分の成績を残しているが、左投手の先発時は22勝32敗(勝率.407)だった。チームの“左投手嫌い”がなければ、地区優勝争いに絡んでいてもおかしくなかったのだ。
そこでカギになるのが新加入の青木宣親。左右別のメジャー通算打率は対右.272/対左.321と左投手からハイアベレージを残す。左投手を苦にするどころか、むしろ得意にしているのだ。
4人目の外野手である右打ちのフランクリン・グティエレスが左投手キラーのため、左投手の先発時はマーティンとスミスのどちらかが先発を外れることが多くなるだろう。休養以外の理由で青木が先発を外れることは考え難いと言える。
さらに、青木は「1番・ライト」を確約されているともいわれている。今季のマリナーズは1番打者を固定できなかったが、来季はその心配はなさそうだ。
今季マリナーズの1番に入った打者全体の打率は.247(ア・リーグワースト4位)で、出塁率は.307(同ワースト5位)とその役割を果たすことができなかった。ここに青木が収まり、今季と同様の数字を残すことができれば、打率.287、出塁率.353ともにア・リーグ4位に匹敵する。
左打者が多い打線において「左投手に強い」ことと、「高出塁率の1番打者」である青木の獲得は的確な補強となったに違いない。脳振とうの後遺症だけが心配の種だが、それさえ克服できれば2014年にロイヤルズをワールドシリーズへと導いた経験もチームにいい影響を与えるだろう。優勝請負人といわれるような青木の活躍に期待がかかる。