長打も少ないロッテ・岡田幸文
野球をやっている人なら一度は打ってみたい本塁打。プロの選手が特大の本塁打を放ち、ベースを悠々と一周する姿に憧れるファンも多いだろう。しかし、プロで多くの打席に立ちながらまだ1本もホームランを打っていない選手がいる。
ロッテの岡田幸文は、2014年7月31日の日本ハム戦で横沢七郎(東急)が持っていた、デビュー以来1770打席連続本塁打なしのプロ野球記録を更新し、15年終了時点で2087打席まで記録を伸ばしている。
一般的に長打になりやすい打球はフライだが、昨季、岡田のゴロアウトフライアウトの比率はゴロアウトが77に対し、フライアウトが40。ゴロとフライの比率を見るセイバーメトリクスの指標、GO/AO(※)を調べても1.93とゴロの割合が圧倒的に多い
昨季、セ・パ両リーグで規定打席に達した選手のなかで、岡田より長打の割合が少なかった選手がひとりいる。日本ハムの中島卓也で、136安打中、長打は二塁打8本、三塁打2本。安打に占める長打の割合は7.4%だ。中島も、プロ入り後1433打席に立ちながらまだ本塁打を打っていない。今季、617打席に立っているが、来季も同じくらいの打席数を記録し本塁打を打たなければ、2000打席に届く計算になる。
中島の打球の内訳は、208ゴロアウト、71フライアウトでGO/AOは2.93。岡田以上にゴロを打つタイプだ。また、中島は左打者だが、外野へのフライアウト51本のうち48本がセンターから左方向へのもので、ライトへのフライは3本しかなかった。内野ゴロも右方向(一、二塁ゴロ)63本に対し、左方向119(三塁、遊撃ゴロ)と、逆方向への打球が多い。俊足を生かすために、逆方向への意識を徹底しているのだろう。
初打席に限らない連続打席本塁打なしは2528打席
プロ入り以降、1000打席以上立ちながら本塁打を打っていない選手は、もうひとりいる。1372打席で本塁打なしの松本哲也(巨人)だ。今季の松本は37打席に終わったが、ゴロアウト8、フライアウト11でGO/AOは0.73と、岡田や中島と比べてフライの割合が多くなっている。ただ、松本のフライアウト11本のうち、引っ張った当たりはライトフライ1本だけと、やはり逆方向への打球が多い。
初打席からに限らない連続打席本塁打なしの最長記録は2005年~2009年に赤星憲広(阪神)が記録した2528打席。メジャーリーグでは、1871年~1885年にアスレチックスなどでプレーしたデーブ・エグラーで、通算2593打席に立ったが本塁打は1本も打てなかった。近代野球とされる1900年以降では、フィリーズなどでプレーしたエミル・バーバンの2592打席が最長だ。バーバンは、1944年~1950年の7年で3109打席に立ち、1本塁打を記録しただけだった。
岡田が来季にも赤星の記録を更新する可能性があるが、果たして3選手のうち最初に本塁打を打つのは誰だろうか? 3選手とも俊足のため、初本塁打がランニングホームランの可能性もあるが、大いに注目だ。
(※)GO/AO
ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロとフライの比率を調べる指標。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライの割合が高い打者となる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)