オリックスの1位・吉田正尚が新人王候補の筆頭
プロ野球選手が一度しか獲得できないタイトル、新人王。まだキャンプも始まっておらず、少々気が早いどこよりも早く新人王を予想してみたい。今回はパ・リーグ編。
パ・リーグの新人王、過去60人のうち、投手は45人、内野手は10人、外野手は4人で、捕手は1984年の藤田浩雅(阪急)しかいない。
過去の傾向を見ると、投手が圧倒的有利だが、2016年シーズンの新人王候補の筆頭には、オリックスに1位指名された吉田正尚外野手(青山学院大)を挙げたい。ユニバーシアードでは大学日本代表の4番を務めたスラッガーで、この秋は東都二部ながら打率.400、5本塁打、15打点の活躍で三冠王に輝いた。身長173センチとプロでは小柄の部類に入るが、スイングの鋭さ、大きさはプロのなかでも抜けた存在となりそうで、空振りでもスタンドを沸かせることができる選手だ。
オリックスの外野陣はケガ人が多く、絶対的なレギュラーは不在。吉田は守備力に若干不安はあるものの、大きなマイナスにはならないレベルは持っている。総合的に見れば、いきなりレギュラーの座をつかむ可能性は十分にあるだろう。パ・リーグの新人王で20本塁打以上を記録した選手は過去に5人だが、吉田が6人目になるかもしれない。
吉田の対抗となりそうなのが、同じくオリックスから2位で指名された近藤大亮(パナソニック)だ。これでもかというほど速球で押すピッチングが持ち味で、その速球も常時140キロの中盤を記録する。変化球が抜けやすいのは課題だが、短いイニングなら即戦力だ。今季、オリックスのリリーフ陣は役割を固定できず、シーズンの最後まで勝ちパターンの継投を確立できなかった。近藤が終盤の1イニングにはまったら、かなりの成績を残せるのではないだろうか。
投手では西武の1位、多和田真三郎(富士大)も候補だ。軸足の膝が地面にべったりとつくほど重心を深く沈めたフォームは、一度見たら忘れられない。打者の手元でグイッと浮き上がるように見える速球のキレも素晴らしく、慣れないうちはプロの打者も苦労するだろう。
この秋、肩の故障で実戦登板がまったくなかったのは不安だが、万全の状態ならば先発で二ケタ勝利も見えてくる。リリーフ陣に不安のある西武なら、セットアッパーを任せても面白い。
圧倒的なスピードが持ち味の楽天・吉持亮汰
梨田昌孝新監督の下、2年連続最下位からの巻き返しをはかる楽天が2位で指名した吉持亮汰(大阪商業大)も新人王争いに入ってくる逸材。
吉持の魅力は、なんといってもスピードだ。本職はショートだが、三遊間の深いところに飛んだ打球を難なくアウトにできるほどの肩を生かし、大学時代はマウンドに上がったこともある。スピードガンでは140キロ台を連発する強肩だ。投げることと走ることのスピードでファンを魅了するだろう。
今季の楽天はショートの人材難に悩まされたが、吉持は1年目から戦力になれるはず。大久保博元前監督が掲げた超機動力野球は不発に終わったが、吉持ひとりでもスピードで相手チームをかき回すことができる。野手では楽天球団史上初の新人王なるか、期待したい。
最後にもうひとり、候補を挙げたい。日本ハムが1位指名した左腕、上原健太(明治大)だ。大学時代の下級生の頃は150キロ台を連発していたが、3年生以降は不振に陥り、球速が落ち、コントロールも悪くなった。しかし、190センチの長身に加え、腕を真上から振り落とす角度はなかなか真似できるものではない。指にかかったときのストレートは圧巻で、そういった球を投げられる割合が増えていけばいきなり二ケタ勝利を挙げても不思議ではない。選手の育成に関しては12球団でもトップクラスの日本ハムで、才能が爆発するか見守りたい。
◎本命 吉田正尚(オリックス)
○対抗 近藤大亮(オリックス)
▲単穴 多和田真三郎(西武)
×穴 上原健太(日本ハム)、吉持亮汰(楽天)
文=京都純典(みやこ・すみのり)