リーグでも屈指の安定感
大型補強を敢行し、昨季は優勝候補に挙げられたものの開幕から波に乗れず、森脇浩司監督がシーズン途中で休養するなど期待を大きく裏切ったオリックス。優勝争いはおろかクライマックスシリーズ争いにも加わることができず5位に終わった。
雪辱のシーズンとなるが、このオフはドラフトと新外国人の補強に留まった。ドラフト1位の吉田正尚や2位の近藤大亮など即戦力とされる新人も多いが、派手さという点では昨季ほどのものはない。谷佳知や平野恵一、馬原孝浩といった一時代を築いた選手が引退し、今季は世代交代をはかりながら戦うシーズンとなるだろう。
そのなかで、投手陣の中心として期待がかかるのが西勇輝である。昨季、チームが低迷するなかで、10勝6敗、防御率は大谷翔平(日本ハム)に次いでパ・リーグ2位の2.38。シーズンを通して安定したピッチングを見せた。昨季、西は24試合に登板。シーズン初登板となった3月31日のソフトバンク戦は、5回途中7失点でノックアウト。しかし、その後は5回未満で降板した登板が、5月17日で先発した日本ハム戦の1回しかなかった。
シーズン通算では20試合でクオリティースタート(6回以上投げて自責点3以下)を記録。クオリティースタート率(QS率)は83.3%で、規定投球回に達した投手のなかでは両リーグ4位となり、パ・リーグではトップだった。数字の上では、先発投手の役割を最も果たしたと言ってよい。
走者を出してからの粘り強さが光る
西が安定したピッチングをできた要因のひとつに走者を出してからの粘り強さがある。出塁を許した走者を本塁に生還させなかった確率を示すLOB%(※)という指標があるが、西は規定投球回に達した投手のなかでリーグトップの82.4%を記録した。
走者を許してから最も粘り強かった西だが、得点圏に走者を背負った場面でも強さを見せた。得点圏に走者を背負った場面では114打数20安打、被打率.175。これは、規定投球回に達した投手のなかで両リーグトップの数字。打たれた20安打のうち16本は単打で、長打は二塁打3本、本塁打1本の計4本しかなかった。得点圏で打たれても、失点を最小限に食い止めていたのである。
また、2アウトで得点圏に走者を背負った場面では3月31日松田宣浩、4月14日内川聖一(いずれもソフトバンク)、5月24日田村龍弘(ロッテ)、8月1日ペーニャ(楽天)、9月12日今江敏晃(ロッテ)の5人に安打を許しただけで被打率は.088(57打数5安打)。2アウトからの余計な失点を防いだ。
粘り強さを見せた西だが、課題もある。本拠地京セラドームでは12試合に登板し6勝1敗、防御率1.33と得意にしたが、それ以外の球場では4勝5敗、防御率3.62。また、デーゲームでは16試合に登板し9勝2敗、防御率1.61だったが、ナイトゲームでは8試合に登板し1勝4敗、防御率4.06。得意不得意がはっきりし過ぎているのだ。チームの中心投手としては、少しでも苦手なものをなくしたい。
エース金子千尋を筆頭に、オリックスの先発陣はリーグでも屈指だ。球団は、「今年こそは!」という思いも強い。昨季オフの大型補強で獲得した選手もこのままでは終われないはずだ。最後のリーグ優勝は96年とパ・リーグでは優勝から最も遠ざかっているオリックスの逆襲には、西のこれまで以上のピッチングが必要となる。
(※)LOB%の計算式
(安打+与四死球-失点)/(安打+与四死球-(1.4×本塁打))
文=京都純典