コラム 2016.02.08. 19:00

偉業よりチームの勝利 大記録を3回逃した182勝投手・西口文也

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05年5月、ノーヒットノーラン目前に巨人・清水(奥)に本塁打を打たれた西武の西口(C)KYODO NEWS IMAGES

プロ2年目から7年連続二桁勝利のエース


 研鑽された技術のぶつかり合いである勝負。そこから離れたときに放たれた野球選手の“ことば”——。今回は、西口文也(元西武)に注目したい。

 細身の体で、西武の看板を背負い続けてきた大エース・西口文也が21年間の現役生活に幕を下ろした。

 西口は1994年、ドラフト3位で西武に入団。初年度こそアメリカ独立リーグに野球留学をしていたが、2年目には16勝、翌年は15勝を挙げMVP・沢村賞を獲得。2002年まで7年連続の二桁勝利と一時代を築き上げた。その後、調子を崩すことはあっても、西口は常に先発ローテーションの柱として、投手陣の中心選手として君臨する。

 チームメイトだった、松坂大輔(現ソフトバンク)も涌井秀章(現ロッテ)も岸孝之(西武)もみんな西口の背中を見てエースに成長していった。だが、ここ3年間は未勝利に終わり、二軍を主戦場とした。

 引退後は、球団本部編成部に所属となる。具体的には台湾、中国、オーストラリア、日本の独立リーグを視察し、指導するとともに自らもコーチ修行をしていく。2016年3月からは、台湾・統一ライオンズの臨時コーチ就任も務めるという。球団としては、次世代の監督・幹部候補として期待。西口の残してきた功績と、後輩たちに慕われる本人の人柄を思うと納得できる。


大記録を3度逃した男の本音は?


 あまりに有名な話だが、西口といえば9回ツーアウトからノーヒットノーランという大記録を2回逃している。

 02年のロッテ戦では、小坂誠(当時ロッテ・現日本ハムコーチ)にセンター前ヒットを打たれた。本人は「まだ、(ノーヒットノーランは)僕には早いっていうことなんでしょうかね」とのコメントを残している。

 2度目は、05年の巨人戦。同じく9回ツーアウトから清水隆行(当時巨人・現解説者)にホームランを打たれた。試合後、西口は「チームが勝てたのでよかったんじゃないですか」と語った。ここまででも十分に凄い投手なのだが、西口には3度目もあった。

 3度目の05年8月27日楽天戦は本当に惜しい試合だった。好調の西口は、9回まで打者27人にヒットを許さず、フォアボールも与えない。通常なら完全試合を達成しているはずだが、味方の援護がなく、10回表、先頭打者の沖原佳典にヒットを許してしまう。

 結局試合は10回の裏、石井義(当時西武・現独立リーグコーチ)のサヨナラ打で決着。「いやいや、まあチームが勝ったんで。僕には縁がないんでしょう」と飄々と応えていた場面が印象に残る。

 西口の引退登板は、5回ツーアウトの走者なしの場面で、打者はロッテの井口資仁。6球を投じ、結果は際どいフォアボールだった。引退セレモニーの挨拶で、西口は記録についても言及している。

 「ノーヒットノーラン未遂2回、完全試合未遂1回、そして今日は四球……。ファンの期待を裏切ることもたくさんありましたが、ファンの声援には勇気と力をもらいました」。

 西口は晴れ晴れとした表情で言い切った。果たして西口は大記録を逃したことを後悔しているのだろうか? 意外なことに、引退後に語った言葉では悔しさのかけらすらない。

「心残りはありません。その3試合とも勝てていますから。記録としては残らないけどファンの記憶には残っている」

 偉業よりもチームの勝利を優先する潔い姿勢がなんとも西口らしい。だからこそ、後輩も西口を慕い、ファンも彼の姿に声援を送り続けた。引退セレモニーで印象的なシーンがあった。

 西口は、自らの青いグラブをマウンドに置き去っていった。そのグラブを拾い上げ、西口の後を追ったのは高橋光成。エースの魂は、次世代の投手たちに引き継がれていく。

文=松本祐貴(まつもと・ゆうき)

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