ルーキーたちも猛アピール
春季キャンプは各チーム終盤へ突入し、新人選手たちも開幕一軍に向けて猛アピールを続けている。
今年は楽天のオコエ瑠偉やロッテの平沢大河といった高卒ドラ1ルーキーが話題になっているが、高卒1年目野手の新人王は88年の立浪和義(中日)が最後。まだ10代の彼らの一軍キャンプ抜擢には将来への先行投資という意味合いも強いのだろう。
対照的に1年目から勝負なのが大学・社会人出身ルーキーたちである。毎年続々とプロ入りしてくる即戦力候補の新人選手、彼らは1年目に一軍で何らかの痕跡を残さないとその後の野球人生も苦戦することになる。
昨秋に行われたプレミア12の侍ジャパンメンバーを見てみると、大学・社会人出身選手は28名中11名。投手は13名中8名が大学・社会人出身プレイヤーで占めてられているのに対して、野手は15名中3名という少なさである。
内訳を見てみると、則本昂大、菅野智之、沢村拓一、大野雄大、山﨑康晃、小川泰弘、嶋基宏、松田宣浩、秋山翔吾が大学出身。増井浩俊、牧田和久が社会人出身だ。
彼ら大学・社会人組は全員プロ1年目に一軍デビューしており、則本、沢村、山﨑、小川、牧田は新人王を獲得。小川に新人王を譲った菅野にしても1年目に13勝を挙げる活躍を見せた。野手3名の大卒組も嶋は1年目に125試合に出場しオールスターファン投票にも選出され、松田と秋山はそれぞれ1年目に一軍で開幕スタメンを勝ち取っている。
高卒ルーキーとは違って自分たちには時間がない。恐らく、選手本人達もそれは痛いほど実感しているだろう。
例えば、昨シーズン巨人で9勝を挙げたドラフト3位右腕・高木勇人(三菱重工名古屋出身)は、1年目のキャンプでは第1クールから連日ブルペン入りし周囲を驚かせた。結果、開幕ローテーションを勝ち取り、3・4月度の月間MVPも獲得。さすがにシーズン後半にバテたものの、2年目の今季もローテの中心として期待される。
首脳陣やマスコミもキャンプでは即戦力候補の新人選手に注目する。ここでアピールできればプロ生活スタートダッシュを切れるし、結果を残せなければニ軍行き。だが、ファームでは強化指定選手の10代の高卒選手達が優先的に起用されるケースも数多い。
大学・社会人出身選手にとって、まだ1年目なんてエクスキューズは存在しない。1年目こそ勝負。彼らにとって野球人生を左右するプロ1年目のシーズンがもうすぐ始まろうとしている。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)