ライバルの背中を追いかける
楽天の今季初対外試合で先発を任されたのは、2013年ドラフト1位投手、森雄大だ。14年は2勝3敗、昨季は3試合に登板するも2敗と、周囲の期待に応えられない苦しい時間を過ごしてきた。
「今季は先発ローテーションを争う投手が多い。テンポの良い投球に向けて、さらに(調子を)上げていきたい」と、自身の課題を見つめながらそう語る若き左腕は、この試合を3回無失点に抑えてみせた。「内容はまだまだが、結果を出すことが一番大事」と話す彼の目からは、並々ならぬ闘志が伝わってくる。
今年、ハワイで合同自主トレを行った森は、昨季引退した永井の「とにかく肉を食え」との助言を受けて、「食トレ」を敢行。1日5食を自身に義務付け、高タンパクを意識的に摂取。
「もう肉は見たくない」と苦笑いするほど巨大ステーキを胃袋に捻じ込んだ甲斐あって、体重はシーズン終了後より6キロ増加し、82キロに到達した。遠目に見ても一回り大きくなったその体躯からは、今までにない凄みを感じさせる。
それだけではない。キャンプ二日目に行われたシャトルラン(1分ごとにスピードが上がる音楽に合わせて20メートルの区間を往復する持久走)では見事チーム1位の数字を記録。自身がルーキー時代に打ち立てた137本を更新する141本を走破した。本人も体重増の影響を不安視していたが、蓋を開けてみれば確かな進化に気付かされた。筋力だけではなく、身体機能が向上している裏付けと言えるだろう。
梨田監督が「ボール、ボールでは森自身も疲れてしまう。自分を信じてストライクを投げられるかどうかだ」と指摘するように、森の課題は制球にある。星野仙一監督(当時)に「アイツは面白い存在になる」とまで言わしめ、高卒2年目にして開幕ローテーションを任されるも、満足な結果を残すことはできなかった。その時、「要所で無駄なフォアボールをだすことで、ピッチングのリズムを崩し、自滅している」と、森自身も消化しきれずに漂うその課題を口にしていた。
同じ高卒ドラフト1位入団で、森自身ライバル視してきた松井裕樹は、チームでの活躍を評価され、侍ジャパンにも招集された。これ以上溝を空けられるわけにはいかない。プロ入り4年目を迎える今季、いよいよその真価が問わる。自身の課題と向き合い続け、肉体改造を図った眠れる獅子が、今動き出そうとしている。