社会人野手の指名が10年以上ない
最近10年でリーグ優勝4回(日本一1回)、2年連続でBクラスはなく、安定した成績を残している日本ハム。育成契約を採用せず、少数精鋭の方針を貫いている。2004年に北海道へ移転して以降、徐々に現在のようなチーム編成となっていったが、特徴を一言で表すなら「若いチーム」である。
昨季の主な野手を見ると陽岱鋼(福岡第一高)、中島卓也(福岡工)、田中賢介(東福岡高)、中田翔(大阪桐蔭高)、西川遥輝(智弁和歌山高)、近藤健介(横浜高)と高卒が並び、生え抜きの大卒は大野奨大(東洋大)と岡大海(明治大)くらいだ。
控え選手の顔ぶれを見ても、飯山裕志(れいめい高)、杉谷拳士(帝京高)、谷口雄也(愛工大名電高)、浅間大基(横浜高)と高卒が多い。生え抜きの社会人出身野手がひとりもいないのは12球団で日本ハムだけだ。
ドラフトでも、2006年の大学・社会人ドラフト6巡目の金子洋平(ホンダ)が最後の社会人野手指名である。
20代前半に野手は集中していて、これほどフレッシュなチームも珍しい。少数精鋭ということもあり、とくに野手の選手層は薄く、ケガ人が少しでも出たら苦戦を免れないが、これもひとつの戦い方だろう。
高卒ルーキーでもドラフト6位でも積極的に起用
新人など経験の浅い野手の起用法も独特だ。ドラフトでの指名順位が低い選手は、まず二軍でプロの水に慣れさせることが多いが、日本ハムは指名順位に関係なく、一軍に必要ならどんどん起用していく。
昨季は、5月に高卒ルーキーの浅間を一軍に呼び、スタメンで起用。浅間はドラフト制後、史上ふたり目となる高卒ルーキーの初出場から2試合連続盗塁、4試合連続安打を達成した。体力がついてからではなく、使えるときに使い、旬を逃さない。
今年のルーキーでは、ドラフト6位の横尾俊建が積極的に一軍で起用されている。15日までオープン戦全試合に出場し、19打数4安打2打点。本職は三塁手だが、現在は主に一塁手として起用され、慶應義塾大時代はほとんど経験がない二塁の守備にもついている。
横尾は長距離打者というより、広角に打ち返す打撃が持ち味で勝負強さもある。守備はお世辞にもうまいといえないが、日本ハムとしては右の代打、一塁と三塁の控えとして考えているだろう。指名順位というフィルターを通さずに選手を見極める日本ハムらしさが表れた起用法だ。
近年、日本ハムは高校生中心のドラフト指名が続いたが、昨年は8人のうち高校生はふたりだけ。大学生、社会人を多く指名した。年齢のバランスをとったのかもしれないが、若者路線に一度ストップをかけている。気が早いが、秋のドラフトではどういった戦略をとるのか、今から興味が尽きない。
文=京都純典(みやこ・すみのり)