「ミスタータイガース」襲名の条件とは…
阪神タイガースには、かつてミスタータイガースと呼ばれた選手がいる。そもそも、「ミスタータイガース」には条件が必要だった。
1.タイガースの主力選手であること
4.阪神の優勝に貢献していること
この4つだそう。「初代・ミスター」は藤村富美男。「物干し竿」のような長いバットで本塁打を量産した。そして村山実も、「ザトペック投法」を武器に200勝投手の仲間入り。この2人は阪神ファンにとって特別な存在となる。
惜しいのは田淵幸一。1975年に本塁打王に輝くなど、捕手として一時代を築いたが、1978年に西武へと移籍。阪神の優勝にも貢献していないことから、「3代目・ミスタータイガース」と呼ぶことに違和感を持つファンもいるというのが現状だ。
このため、掛布雅之は3代目とも4代目とも言われている。しかし、彼の場合は正真正銘のミスタータイガースだ。
次代の「ミスタータイガース」は…
掛布は、1974年のドラフト6位で阪神に入団。それほど期待されていなかったが、猛練習で素質が開花する。
のちに本塁打王は3度、打点王を1度獲得し、1985年の日本一にも貢献した。1988年シーズン限りで引退したのだが、それ以降の阪神では日本人の長距離砲が育っていない。正直、「ミスタータイガース」と呼ばれる人材がいないのだ。鳥谷敬内野手あたりが、一番近いのかもしれないが、打撃主要三部門でタイトルを取れていないことなど、物足りなさは否めない。
そういったところで、今年から阪神の二軍戦で指揮を執る掛布氏には「5代目ミスタータイガース」の育成に期待がかかる。もともと、卓越した打撃理論には定評があり、本人も「本塁打の打ち損じがヒット」など、長距離砲の考え方も持っている。
期待の若手では、陽川尚将という男がいる。金光大阪から東農大へ進学。ドラフト3位で2014年に、阪神へ入団した。プロ3年目。まだ一軍経験はないが、パンチ力がすごい。
2015年の秋、キャンプで金本監督も好投一番の中、「来季、一番期待できる選手」と喜んだ。12月の台湾ウィンターリーグに参加し、打率.339、2本塁打をマーク。掛布二軍軍監督は今年1月の自主トレを視察し、みんな適当になっているところ。
掛布二軍監督は、陽川について「本塁打を打てる打者。2年目の松井秀喜よりもいいんじゃないか」と評価。日本人の長距離砲=ミスタータイガースの育成にも「必ず、作らないといけない。育てる」と鼻息を荒くした。
また、江越大賀も期待される右の大砲候補だ。ルーキーだった昨シーズンは一軍で56試合に出場。それでも、掛布二軍監督は「一軍へ上がるための材料を示せ」と活動を煽った。それは期待している裏返しだろう。
最後にもう一人、横田慎太郎外野手も候補に入れたい。掛布二軍監督が「トリプルスリーも期待できる。横田という名前を覚えておいてください」と、早くも打撃センスに惚れ込んだという男。ここまでのオープン戦では4割を超える打率を残すなど、一気のレギュラー奪取に期待がかかる。
期待されながらも、なかなか殻を破っていくことが出来ない阪神の若手野手たち。ミスタータイガースの出現を、心待ちにしている。