最も注目を浴びる新監督
2016年シーズン、12球団の中で最も注目を浴びる監督はこの人だろう。
「鉄人・金本知憲」――。現役時代、同じ背番号「6」を背負った和田豊の後を受け継ぎ、阪神タイガース第33代監督に就任した。
連続イニング・連続試合フルイニング出場数の世界記録保持者であり、「アニキ」の愛称で選手はもちろん、ファンからも絶大な人気を誇る。
金本は、“闘将”の遺伝子を引き継ぐ男でもある。
2003年に星野仙一監督(当時)からの猛烈なラブコールを受け、広島から阪神に移籍した金本。開幕からチームの主軸として活躍し、1985年以来となる、18年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。
弱小と呼ばれた虎を見事によみがえらせた星野氏の熱い“男気”。活躍した選手をまるで自分の息子のように抱きしめ、下手なプレーをすれば、ベンチ裏で椅子を蹴り上げるなんてこともしばしば。試合中に響き渡る備品の破損音に、ベンチは凍りついた。
その時の様子が、今の金本監督の脳裏には浮かんでいるはずだ。おとなしい虎を、強くたくましい虎に…。「闘将・金本」誕生の日も近い。
記録にも記憶にも残る男だった。手首を負傷しながらも試合に出場し、右手一本でヒットを放つなど、その「鉄人」ぶりは誰もが知るところ。
頭部への死球を受けた相手投手に対し、「次も思いっきり投げてこい。もしもう一回ぶつけてもおれは怒らんからな」と伝えたという話も有名。鍛えあげた肉体の内側には、後輩のみならずファンからも「アニキ」と慕われるように、でっかい男気を兼ね備える。
毎年シーズン前には、鹿児島・最福寺で燃え盛る炎を前で不動真言を唱える護摩行を行い、「一般人では失神するレベル」と言われる難行を行ってきた。
星野氏の遺伝子、鍛え上げられた鋼のような肉体、そして強い精神力は、監督という立場でも存分に発揮できるはずだ。
“男気”でチームを変える
マイナス材料は一切見当たらない。「負けたら俺の責任や、思い切りやってこい」。きっと金本監督は、たとえ負けても選手を攻めたりはしないだろう。負けたら俺が悪い。これこそ「男気」。この熱い気持ちに、阪神ナインが発奮しないはずがない。
さらに就任会見ではこう語った。「出来れば補強なしで、今の選手で勝っていくのが理想」。
この言葉に、彼の人間性が表れている。有名選手を獲得するよりも、今いる選手たちを信じ、このチームで優勝したいと気持ちの表れだった。
金本イズムを選手達に注入し、熱く、そして厳しく選手を引っ張っていく。選手達もまた、その男気に全力で答えていくはずだ。
直近の3年間、阪神は2位・2位・3位とAクラスにはいるものの、タイトルには届いていない。「鉄人」「アニキ」…次の称号は果たして何になるのか。
やはり金本には「闘将」の文字がふさわしい。