苦戦が続くイチローに今季初安打
現地時間12日(日本時間13日)、マーリンズのイチローがラッキーな形で今季初安打を記録した。
マーリンズのフェルナンデスとメッツのシンダーガードという若き剛腕対決に注目が集まった一戦で、イチローは1-1の同点で迎えた7回表、二死二塁という勝ち越しのチャンスに代打で登場する。
2球目を打ち返すと、三遊間への打球をショートがスライディングをしながらバックハンドでさばき、すぐに立ち上がって一塁へ送球。遊ゴロと思われたが、一塁塁審の判定はセーフに。しかし、二塁走者が本塁に突っ込み憤死。勝ち越しはならず、そこでイニングは終了となった。
現地放送局のリプレーでは、イチローは間一髪アウトだったように見えたが、走者憤死でイニングが終了したため、記録は内野安打のまま。2016年初安打は“幸運”な一本となった。
いつか来る“その時”を逃さないために...
チームは開幕から6試合を終えたが、その間イチローが打席に立ったのは僅か3度(3打数1安打)。きょうのメッツ戦では一打勝ち越しの場面で起用されたが、昨日までの起用法を見れば、首脳陣からの信頼は決して厚いとはいえない。
タイガースとの開幕戦では、4点ビハインドの6回に代打で起用され、9球目を打ち投邪飛に倒れた。現地の実況は、イチローがファウルで粘ったことを褒めていたが、安打や出塁以外で褒められることは、イチローにとって屈辱以外のなにものでもなかったはずだ。
今シーズンのイチローの“苦戦”を予感させる象徴的な試合がある。開幕から4戦目のナショナルズ戦(現地10日)だ。2点ビハインドの9回裏、後がない二死一塁の場面で代打に起用されたのは、控えの“ライバル”でもあるディートリッチだった。
一発が出れば同点という場面、昨シーズン90試合の出場で10本塁打の選手が起用されるのは当然といえば当然なのだが、昨シーズンなら間違いなくイチローにも出番が回って来ていたであろう試合展開だった。
出場機会を争うディートリッチは、きょうのメッツ戦で今季初先発(6番サード)。3打数2安打で1打点と結果を残し、今シーズンの通算成績を打率.667(6-4)、3打点とし、勝負強さを見せつけている。
また、マーリンズが誇る若き外野手トリオ(スタントン、イエリッチ、オズーナ)も開幕から6試合はそろって先発で出場しており、イチローが先発で起用される機会はそう多くは巡ってこないとみられる。
ただし、チャンスがまったくないわけでもない。3人の外野手のうち、オズーナはここまで打率.172と調子が上がっておらず、加えてチームは今週金曜日から17連戦を控えている。この間に、イチローが先発で起用される機会は必ず巡ってくるだろう。
今シーズン中の3000安打達成には、少ないチャンスをしっかりものにして、一本ずつ安打を積み重ねるしかない。
昨年序盤も代打起用が続いたが、イエリッチの故障などで巡ってきたチャンスをしっかりものにした。その姿を覚えているファンも多いだろう。
いつ来るかわからない“その時”のために――。今年もイチローは決して準備を怠らない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)