大引離脱も西浦、今浪、谷内...めまぐるしいアピール合戦!
ヤクルトの正遊撃手争いが熱い。
開幕戦でショートを務めたのは大引啓次。FA移籍した昨季は、ケガによる離脱もあって攻守ともに期待を裏切ってしまったが、今年はその悔しさを晴らすかのように開幕から好調な打撃を披露する。
4試合の出場で10打数の5安打、打率5割というスタート。「今年は違う」というところを見せつけたが、その期待は儚く消える。3月31日、前日の試合で腰を痛めて登録を抹消。早々に戦線離脱を強いられる。
その後、大引に代わって遊撃手のスタメンを務めたのは、今浪隆博や西浦直亨、谷内亮太という面々。そのなかでも、大卒4年目の谷内が印象的な活躍を見せた。
4月6日に今季初出場を果たすと、そこからヒットを量産。無安打に終わったのは4月13日の巨人戦のみで、8試合で26打数13安打と打ちまくり、猛打賞を3度記録。4月16日、17日のDeNA戦でも2試合で計7打数6安打、2本の二塁打を記録するなど大当たり。チームの3連勝に大きく貢献し、レギュラーの座をぐっと引き寄せた。
ところが、だ。18日の阪神戦の第2打席、阪神先発・藤浪の速球が左手首に直撃。4回裏の守備から途中交代となる。診断の結果は左尺骨の骨折。ヤクルトはまたしても打率5割のショートを欠くことになってしまった。
レギュラーを固定できないなかで生まれる切磋琢磨
ヤクルトの内野陣は強力だ。背中の張りにより畠山和洋が離脱はしているが、山田哲人、川端慎吾と昨季のタイトルホルダーがずらりと顔をそろえ、扇の要には若き司令塔として成長した中村悠平が腰を据える。
一方で、外野陣も坂口智隆の加入とバレンティンの復帰により、雄平を加えた3人でほぼ固定された。
その中で“日替わり”と問題視され、唯一の“穴”とされてきたのがショートのポジション。これまで弱点だったポイントが、谷内らの活躍によって、逆に面白くなってきた。
絶好調の谷内は離脱したものの、21日には大引が復帰。再び熾烈な争いがはじまる。
「レギュラーを固定できない」のは好ましくないとされるが、複数の選手が日替わりで活躍してくれれば、ファンとしてこんなに面白いことはない。その切磋琢磨のなかで、徐々に若手へと切り替わっていくことが、世代交代という意味でも美しい姿であろう。
さらにファームには、将来の大型遊撃手と期待されるルーキー・広岡大志も控える。春季キャンプ中、宮本賢治二軍監督は「広岡をモノにさせられなかったら指導者失格。鳥谷敬(阪神)や坂本勇人(巨人)のように打てるショートになる」と大きな期待を語っていた。
ベテランと若手が群雄割拠するヤクルトの遊撃手争い。“唯一の穴”を巡るバトルからしばらく目を離せそうにない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)