不死鳥・館山昌平に相談
今季はすでに先発として7試合に登板。勝ち星こそ1つだが、楽天の釜田佳直が野球ファンを唸らせる投球を続けている。先発投手の指標であるQS率は57%。しかし、その数字以上の粘りの投球を演じ、欠かせぬ存在としてチームに貢献している。
4年前、釜田のデビューは鮮烈だった。ドラフト2位で金沢高校から入団した177センチの高卒右腕が最速153キロの直球を勢いよく投げ込み、瞬く間に7勝を挙げた。だが、右ひじの痛みが釜田を襲う。悩んだ末に相談したのは、トミー・ジョン手術を経験している館山昌平(ヤクルト)。その体験談を聞き、未来を考えたとき「プラス面しかない」と手術に踏み切ったというエピソードは有名だ。
約1年間にわたりボールを投げられないリハビリの日々が続いたが、昨年の8月、5回7安打4失点ながらも716日ぶりの復活勝利を収める。ヒーローインタビューでは、「1年目の活躍があったからこそ、戻るためのキッカケになりました。ただいま! いま帰ってきました!」とファンの声援に応えた。その表情は、実に晴れ晴れとしたものだった。なぜならば、釜田は手術からの復活とともに、新しいピッチングスタイルも手に入れたからだ。
打者を翻弄する投球術
ケガをしたことで、釜田の投球術は確実に変化した。デビューイヤーの速球とスライダーで押す投球ではなく、昨年からはストレートを中心にカットボール、シュート、カーブ、フォークなど変化球を効果的に使い打者を翻弄することが増えている。例えば、4月10日の大谷翔平に投げ勝ったピッチングで、7回を4安打失点0に抑えた投球術も見事だった。7回のノーアウト1、2塁のピンチも速球を見せ球にして、変化球でコーナーを丁寧につき、連続三振とセカンドゴロでしのいだ。ケガをする前の釜田であれば、速球でグイグイと押すことに終始していたかもしれない。
今季楽天の先発陣は、例年通りエース・則本昂大を中心に構成されているが、則本以外は二ケタ勝利の実績のない投手陣だ。釜田の立ち位置は、3番手、4番手といったところだが、防御率は3.12と安定感はチームトップクラスだ。
不安があるとすれば、釜田が1年目に投げたイニング数が112イニングだったということ。つまり、まだ1年間を戦い切った経験がない。もし釜田が今年、規定投球回の143イニングを超えてくることがあれば、楽天にとっては則本に続く“第2の柱”ができることになる。勝利数はまだ「1」だが、いまのような粘りのピッチングをしていれば、数字は必ずついてくるだろう。ケガを乗り越え、打者をかわす投球術も身につけた釜田のさらなる成長に期待したい。
文=松本祐貴(まつもと・ゆうき)