純粋にスゴイ「高卒4年目」として見る“打者・大谷”
「5番・ピッチャー」大谷翔平のフルスイングから、ロケットのような打球がライトポール際に飛んでいった。
6月5日・巨人戦、8回表の第4打席で放った1本の特大ファールで敵地東京ドーム全体をどよめかせた男。投げてはクルーズに対して公式戦最速163キロを計測、10奪三振1失点の完投勝利がニュースとなる中、15試合連続安打でスラッガー大谷のポテンシャルも充分見せつけた試合だった。
今季は35試合(108打席)の出場で打率.359、9本塁打と、打者として恐るべき進化を続ける94年7月生まれの21歳。これは163キロ右腕ではなく、純粋に「高卒4年目の野手」として見ても驚異的な数字である。今回は球史を代表する歴代スラッガーたちの高卒4年目シーズンの成績を見てみよう。
【主な高卒4年目スラッガーたちの成績】
中西 太(西鉄 55年)
135試合 打率.332 35本塁打 98打点 OPS.1.049
王貞治(巨人 62年)
134試合 打率.272 38本塁打 85打点 OPS.941
張本勲(東映 62年)
133試合 打率.333 31本塁打 99打点 OPS.1.037
掛布雅之(阪神 77年)
103試合 打率.331 23本塁打 69打点 OPS.986
清原和博(西武 89年)
128試合 打率.283 35本塁打 92打点 OPS.1.001
松井秀喜(巨人 96年)
130試合 打率.314 38本塁打 99打点 OPS.1.023
中村剛也(西武 05年)
80試合 打率.262 22本塁打 57打点 OPS.924
中田 翔(日本ハム 11年)
143試合 打率.237 18本塁打 91打点 OPS.691
山田哲人(ヤクルト 14年)
143試合 打率.329 29本塁打 89打点 OPS.941
大谷翔平(日本ハム 16年)
35試合 打率.359 9本塁打 22打点 OPS.1.163
こうして見ると歴代スラッガーの多くが「高卒4年目」には主力打者として定着しているのが分かる。一本足打法元年の王貞治は初めての本塁打王と打点王を獲得し、ゴジラ松井は自身初の3割・30本を記録。近年のおかわり君こと中村剛也(西武)や侍ジャパンの4番中田翔(日本ハム)も4年目にして初めてレギュラーとして定着した。
また、最近は裁判で世間を賑わせている清原和博はなんと、4年目のシーズン終了時までに通算126本塁打を放っている。高卒でプロ入りして年平均30本以上のホームランを打ち続けた早熟の天才。今思えば、天才バッター清原のピークはプロ4~5年目だったような気がしてならない。
いつの時代も、新時代の扉を切り開くのは規格外の若い才能だ。20数年前、若き日のイチローが振り子打法で球界に革命を起こしたように、2016年に二刀流で球界の常識をぶち壊そうとしている大谷。高卒4年目、年齢で言えば21~22歳の年。土台となる体もできあがり、プロの世界にも慣れ、一流選手として開花する時期。まさに打者・大谷翔平にとっても高卒4年目シーズンは飛躍の年となるだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)