7月、8月に炸裂するバレンティン
ヤクルトの山田哲人が、今季も絶好調だ。6月12日現在、打率.324はセ・リーグ2位、20本塁打、49打点、16盗塁はいずれもリーグトップである。このままのペースでいけば、シーズン通算で43本塁打、106打点、35盗塁と史上初の2年連続トリプルスリーに加え、三冠王の芽も出てきた。
球史に残る成績を残しそうな山田の活躍に隠れているが、2013年にシーズン60本塁打の日本記録を樹立したウラディミール・バレンティンも好調を維持している。今季ここまで58試合に出場し打率.279、15本塁打、48打点。本塁打はリーグ3位タイ、打点はトップの山田と1点差につけている。このままのペースでいけばシーズン33本塁打となり、2013年に次ぐ数字となる計算だ。
ところで、外国人選手、とくに中南米出身の選手は「夏に強い」とよく聞くが、バレンティンも例外ではない。ケガのため、シーズンのほとんどを棒に振った昨年を除き、日本でプレーしたときの7月と8月の通算成績は144試合に出場し、打率.304、53本塁打、115打点。およそ3試合に1本以上の割合で本塁打を打っている。夏に強いバレンティンだが、その傾向をもう少し深く見ていこう。
最下位脱出には“打ち勝つしかない”現状
シーズン本塁打の日本記録を樹立した2013年の8月に26試合で打率.460、18本塁打という驚異的な成績を残しているが、他のシーズンでも7月と8月は好成績だ。
来日1年目の2011年8月は打率こそ.203だが、本塁打は2011年シーズンで2番目に多い6本を放っている。2012年7月は打率.300、6本塁打。2014年は7月こそ打率.256、2本塁打だったが、8月は打率.364、9本塁打と盛り返した。そこでバットは止まらずに、9月も打率.311、2本塁打と好成績を残している。とにかく夏場になると、バレンティンのバットに勢いが出てくるということが分かる。
今季、ヤクルトのチーム防御率は5.07で12球団ワーストに沈む。リリーフ陣こそ秋吉亮、ジョシュ・ルーキ、ローガン・オンドルセクの勝ちパターンの3人や、ケガから復帰した村中恭兵である程度の計算は立つが、先発陣は完全に壊滅状態だ。
館山昌平、石川雅規ら先発陣にケガ人が相次ぎ、即戦力の期待も大きかったルーキーの原樹理は12試合に登板し2勝7敗、防御率5.82の成績で二軍落ちが決まった。今後、先発陣が復調するような明るい材料もあまりなく、それこそ“打ち勝つしかない”のが現状である。6月12日現在、27勝38敗1分で5位阪神に3.5ゲーム差の最下位だが、首位・広島とは8ゲーム差。苦しい戦いが続いているが、連覇をあきらめるにはまだ早い。
今季もバレンティンが夏に強さを発揮すれば、山田とのコンビは強力なものとなる。塁上を賑わせて、ふたりに多く打席を回すことができれば勝ち星を拾っていくことはできるだろう。セ・リーグ王者が挽回するには、バレンティンのバットに大きな期待がかかる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)