悔し涙が止まらぬほろ苦い本拠地初勝利
7月28日のヤクルト戦に勝利した阪神が今季初の4連勝。ようやくチームの状態も雰囲気も上向いてきた。そのなかで、悔し涙を流していた男がいる。ドラフト5位ルーキー・青柳晃洋だ。
プロ3勝目をかけて登ったマウンドで、3回まではパーフェクトピッチングを披露。4回に、山田哲人、バレンティンの連打により1点は失ったものの、5回は再び三者凡退に抑え、勝利投手の権利を持って臨んだ6回だった。
味方の大量援護に気が緩んだわけではないだろうが、先頭の上田剛史から、坂口智隆、山田に3連続四球を与え、相手の反撃の舞台を自ら整えたところで交代を告げられた。
後を担った安藤優也が押し出し四球などで3点を奪われたことで、この日の青柳は5回4失点。自身のふがいなさに、ベンチに戻った青柳の目からは涙が止まらない。記念すべき本拠地初勝利は、若き右腕にとってほろ苦いものとなった。
打線は復調気味だが不安が残る投手陣
今季開幕前には優勝候補のひとつに挙げられた阪神だが、ペナントレースが進むにつれチーム状況は悪化。ようやくゴメスや高山俊らに当たりが戻り、打線は復調気味とはいえ、投手陣にはまだまだ不安が残る。
エース・藤浪晋太郎は、後半戦、いまだ勝ち星を挙げられず4連敗中。シーズン序盤に絶好調だった岩貞祐太は5月27日の巨人戦を最後に勝利がなく、こちらは泥沼の5連敗中だ。ローテーションピッチャーで貯金ができているのは9勝6敗のメッセンジャーただひとりである。
そんな鬱屈とした空気を打ち破るには、やはり生きのいい若手の台頭に期待するしかない。はにかんだような穏やかな笑顔が印象的な青柳だが、この日の涙が表すように、負けん気は強い。アンダー気味の変則的なサイドスローから、切れ味鋭いツーシームを右打者の内角に食い込ませる投球スタイルも強気そのものだ。
暗黒時代の再来ともささやかれつつある阪神だが、かつての暗黒時代を脱して以降、長く上位争いを続けてきた。このままBクラスに甘んじるわけにはいかない。3位・DeNAとは、まだまだ射程範囲の5ゲーム差だ。
穏やかな風貌ながら生きのいいルーキー・青柳が、チームの浮上を後押しできるか。この日の悔しさを胸に秘めて登る、次回のマウンドに注目したい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)