2016年にブレイクした選手は?
夏の甲子園は作新学院の優勝で幕を閉じ、8月も終わりに近付き、ペナントレースは残り30試合前後となったプロ野球。両リーグの優勝争いも佳境に差し掛かっているが、ここまで想像以上の成長を見せた選手、今年こそはと期待されながら結果を残せなかった選手と悲喜こもごも。プロ野球選手は1年あれば人生を変えられる。今回は2016年シーズンにブレイクした選手たちを前年度の成績と比較しながら球団別に見てみよう。
鈴木誠也(広島/4年目/22歳)
田口麗斗(巨人/3年目/20歳)
15年 13試( 66回1/3) 3勝5敗 防2.71
16年 20試(123回1/3) 9勝6敗 防2.48
石田健大(DeNA/2年目/23歳)
15年 12試( 71回2/3) 2勝6敗 防2.89
16年 20試(124回2/3) 7勝4敗 防2.82
西田明央(ヤクルト/6年目/24歳)
15年 13試 率.147 本1 点 2 OPS.481
16年 51試 率.270 本7 点19 OPS.806
原口文仁(阪神/7年目/24歳)
15年 59試 率.220 本4 点11 OPS.654 ※
16年 83試 率.317 本9 点40 OPS.883
堂上直倫(中日/10年/27歳)
15年 43試 率.158 本1 点 1 OPS.475
16年 108試 率.252 本3 点35 OPS.644
千賀滉大(ソフトバンク/6年目/23歳)
15年 4試( 22回1/3) 2勝1敗 防0.40
16年 20試(135回1/3)10勝1敗 防2.53
高梨裕稔(日本ハム/3年目/25歳)
15年 2試( 7回1/3)0勝1敗0HP 防3.68
16年 32試(81回2/3)7勝2敗3HP 防1.65
南昌輝(ロッテ/6年目/27歳)
15年 20試(102回) 6勝5敗1S 防3.97 ※
16年 46試(51回1/3)3勝3敗14HP 防1.75
茂木栄五郎(楽天/1年目/22歳)
15年 早大からドラフト3位で楽天入団
16年 83試 率.271 本1 点28 OPS.676
大石達也(西武/6年目/27歳)
15年 3試合( 3回1/3)0勝0敗0HP 防0.00
16年 25試合(20回2/3)0勝0敗1HP 防1.74
吉田一将(オリックス/3年目/26歳)
15年 14試(42回2/3)1勝5敗 2HP 防5.27
16年 43試(39回1/3)4勝2敗19HP 防2.97
※は二軍成績
セ・リーグは広島の鈴木が大ブレイク
やはり25年ぶりのリーグ優勝に向けて突き進む広島を牽引する鈴木誠也が最も飛躍した若手選手だろう。二松学舎大付高から12年ドラフト2位で広島入団。4年目の今季は走攻守すべての面でスケールアップ、打率.324、18本塁打、74打点とリーグトップのチーム打率.272、117本塁打を誇る赤ヘル打線の中軸打者としてMVP級の活躍を見せている。
その広島を追う2位巨人は3年目左腕の田口麗斗がすでに9勝、リーグ3位の防御率2.48。弱冠20歳でいまや左のエース的なポジションでローテを守り続け、7月の月間MVPを獲得した。
DeNAの若きサウスポー石田健大も今季大きく成長したひとりだ。将来的にはドラ1ルーキー今永昇太や日本を代表するスラッガーへと進化した筒香嘉智、打率.308と昨季から1割以上アップさせた2年目の倉本寿彦らとともに新時代のDeNAの柱としての期待が懸かる。
そして、ヤクルトと阪神には待望の若い攻撃的キャッチャーが出現した。4月末に支配下登録されたばかりの原口文仁(阪神)と6年目の西田明央(ヤクルト)である。ともに24歳の彼らには球界から絶滅しつつある「打てる捕手」として期待が懸かる。
中日では今さらブレイクと言ったら失礼かもしれないが、プロ10年目の堂上直倫が内野の要として奮闘中。15年は極度の打撃不振で低迷していたが、今季はシーズン終盤に怪我さえなければ12年116試合の自己最多出場数を更新することになるだろう。
パ・リーグは大石、南らがブレイク
パ・リーグでは首位を死守するソフトバンクの剛腕・千賀滉大は武田翔太、和田毅らと強力三本柱を形成し、10勝1敗、リーグ2位の143奪三振。過去に中継ぎの実績はあったものの育成出身の先発投手として初の二ケタ勝利を記録した。
2位日本ハムは昨季2試合の登板から、7月以降はローテの救世主的な働きを見せている3年目の高梨裕稔が7勝、防御率1.65の好成績。
ロッテは昨季1軍未登板も、1月に元メロン記念日の柴田あゆみと結婚したばかりの南昌輝が貴重なブルペン要員として定着。昨季0勝から今季7勝と存在感を見せる高卒3年目の二木康太とともに幕張に新しい風を吹き込んでいる。
楽天のドラ3ルーキー茂木栄五郎はショートを守りながら打率271、パ・リーグでは98年小関竜也(元西武)以来の野手新人王を狙う。
西武では10年ドラフトで6球団が競合、その後結果が出ず野手転向も打診された崖っぷちの大石達也が6年目でついに1軍の戦力になりつつある印象だ。
同じくオリックスも大型右腕として鳴り物入りで入団した13年ドラ1右腕・吉田一将は今季43試合すべてが救援登板。先日、首を痛めて登録抹消となってしまったが、これまでの先発ではなくリリーバーとして開花しつつある。
そして、最後に取り上げておきたいのがこの男だ。
大谷翔平(日本ハム/4年目/22歳)
15年 70試 率.202 本 5 点17 OPS.628
16年 77試 率.348 本19 点50 OPS.1.114
もちろん投手ではなく「野手大谷」としてのブレイクである。7月10日のロッテ戦で右手中指のマメをつぶし、同24日のオリックス戦で中継ぎ調整して以来もう1カ月近く登板はないが、打者としての存在感は日に日に増している。いまや球界を代表する投手にして、球界を代表するスラッガー。4年目の「二刀流」は誰も見たことがない異次元の領域に突入しつつある。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)