過酷なポジションのリリーフ
あまりに残酷な記録達成だった。
中日の岩瀬仁紀が6日DeNA戦で史上3人目の900試合登板を達成するも、打者5人に対して1死も取れず逆転を許し3失点で降板。00年代を代表するリリーバーだった岩瀬は41歳の今シーズン防御率8.59と苦しんでいる。入れ替わりの激しいプロ野球界の中でも「最も過酷な仕事」と言われるリリーフ投手の世界。今回は過去5年間の最多セーブ、最優秀中継ぎを受賞して現在も日本球界に在籍する投手たちの今季成績を見てみよう。
セ・リーグ
藤川球児(阪神/36歳/11年)
33試合 5勝5敗 14HP 2セーブ 防御率4.53
岩瀬仁紀(中日/41歳/12年)
11試合 0勝2敗 2HP 防御率8.59
西村健太朗(巨人/31歳/13年)
16試合 0勝0敗 2HP 防御率4.08
【最優秀中継ぎ】
浅尾拓也(中日/31歳/11年)
今季登板なし
山口鉄也(巨人/32歳/12.13年)
41試合 0勝5敗 15HP 1セーブ 防御率5.85
マシソン(巨人/32歳/13年)
49試合 8勝2敗 35HP 1セーブ 防御率2.65
福原忍(阪神/39歳/14.15年)
8試合 0勝0敗 4HP 防御率5.40
パ・リーグ
【最多セーブ】
武田久(日本ハム/37歳/11.12年)
3試合 0勝0敗 防御率11.57
益田直也(ロッテ/26歳/13年)
50試合 3勝1敗 22HP 8セーブ 防御率1.30
平野佳寿(オリックス/32歳/14年)
40試合 3勝4敗 9HP 21セーブ 防御率1.98
※11年に最優秀中継ぎのタイトル獲得
サファテ(ソフトバンク/35歳/15年)
48試合 0勝5敗 7HP 34セーブ 防御率1.53
【最優秀中継ぎ】
増井浩俊(日本ハム/32歳/12年)
22試合 3勝2敗 4HP 10セーブ 防御率5.04
佐藤達也(オリックス/30歳/13.14年)
33試合 0勝4敗 9HP 防御率5.18
増田達至(西武/28歳/15年)
35試合 3勝5敗 6HP 16セーブ 防御率2.36
※(球団/年齢/タイトル獲得年)
こうして見ると多くの投手がタイトルを獲得した数年前と比較すると大きく成績を落としており、継続して結果を残すのが難しいポジションというのが分かる。さらに彼らは登板試合以外にも毎日のようにブルペンで肩を作らなければならない。20代の頃からチームのために身を削り、30代に入ると故障や勤続疲労で球威が落ち失速してしまうリリーフ投手の過酷な職場環境。
ちなみに昨季セ最多セーブを分け合ったバーネット(元ヤクルト)と呉昇桓(元阪神)はともに今季からメジャーリーガーとなった。近年は現在パ・リーグ最多セーブのサファテ(ソフトバンク)やセリーグ最多HPのマシソン(巨人)といったように助っ人のタフなパワーピッチャーにクローザーやセットアッパーを任せるチームも多い。
年俸ランキング上位者が少ないリリーバー
現代野球では先発ローテよりブルペン整備を優先させろと言われるくらい非常に重要なポジションだが、年俸ランキングを見ると上位20名の内リリーバーは推定5億円のサファテ、3億5000万円の五十嵐亮太(ソフトバンク)、3億2000万円の山口鉄也(巨人)、3億円の平野佳寿(オリックス)の4名のみ。8年連続50試合登板中で先日通算500登板を達成した宮西尚生(日本ハム)でさえ今季年俸は1億9000万円で30位以内にすらランクインしていない。
なかなか評価されず、ヒーローインタビューに呼ばれることも数少ない。それでも雨の日も風の日も投げて投げて投げまくる男たち。今この瞬間しかないのは甲子園の高校球児だけじゃない。プロ野球選手も目の前の一戦に己の肉体と人生を懸けている。
すべてのリリーバーは消耗品である。酷暑の中で連戦が続き、両リーグともに優勝争いが混沌としてきたプロ野球、今季もブルペンを制するチームがペナント制覇にぐっと近付くだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)