前田健太の穴を感じさせない独走劇!
1991年以来、25年ぶりとなる優勝に向けて突き進む広島の勢いが止まらない。
6月14日の西武戦から29日のヤクルト戦まで11連勝。2位とのゲーム差も10ゲームまで広げた。広島が2位に9ゲーム以上の大差をつけたのは、古葉竹識監督時代に球団史上唯一の連続日本一になった1980年以来、実に36年ぶりのことである。
エースの前田健太がメジャーに移籍したことで、開幕前は広島の苦戦を予想する声が多かった。
実際、チーム防御率は昨年の2.92から今季は3.42と悪化している。先発投手が6イニング以上投げ自責点を3以内に抑える「クオリティースタート(=QS)」のパーセンテージも、昨シーズンの66.4%から62.5%とわずかではあるが低下。しかし、セ・リーグ内の順位は防御率が昨季と同じ2位、クオリティースタートのパーセンテージも昨季のリーグトップから今季は2位と大きな差はない。
先発陣は、昨季5勝に終わった野村祐輔が今季は早くも9勝を挙げてリーグ最多。ジョンソンも8勝、黒田博樹は6勝と強固な3本柱を形成している。
そして、何より大きいのがリリーフ陣の安定だ。昨季はヤクルトがローガン・オンドルセクにオーランド・ロマンから秋吉亮、最後にクローザーのトニー・バーネットへつなぐ、いわゆる“勝利の方程式”で混セを制したように、近年は勝ちパターンの継投をいかに作り上げるかが重要となっている。
昨季までの広島は勝ちパターンの継投を見いだせず、今季も開幕当初はクローザーの中崎翔太以外に関しては手探りの状態が続いた。それが4月末から7回をブレイディン・へーゲンズ、8回をジェイ・ジャクソン、9回は中崎という配置で確立。へーゲンズ、ジャクソンの両助っ人の加入が、ある意味では、前田健太の穴を埋めたといってもいいほどの活躍を見せているのだ。
方程式の3人がそろって登板した試合は17勝1敗
へーゲンズは外国人枠の関係で開幕一軍こそならなかったが、4月下旬に一軍昇格を果たすとここまで32試合に登板。4勝1敗15ホールド、防御率2.11と抜群の安定感を誇る。
ゴロを打たせる投球が持ち味で、奪三振率は3.99と高くないものの、与四球率は2.11と制球で苦しむこともない。
ジャクソンはセ・リーグ3位の39試合に登板。3勝3敗19ホールド、防御率1.74。与四球率は2.61で、ヘーゲンズと同じく制球で苦しむタイプではない。それでいて奪三振率11.76と球の力で相手打者を圧倒することもできる。
ここまでへーゲンズ、ジャクソン、中崎が揃って登板した試合は、なんと17勝1敗。6月12日の楽天戦で延長の末に敗れた以外は、すべて勝利を収めているのだ。
勝ちパターンの継投が確立されたことでチームに安心感を与えているが、不安要素がひとつだけある。それが外国人枠の問題だ。
外国人選手の一軍登録枠は4つ。広島は現在ジャクソンとヘーゲンズに加え、ここまで8勝を挙げているクリス・ジョンソンと野手のエクトル・ルナを一軍登録している。
いずれも外せない戦力であるのだが、そこに太もものケガで戦列を離れているブラッド・エルドレッドが近々復帰する。果たして、そのときに誰を削るのか…。贅沢な悩みとなる。
安定感抜群の勝利の方程式を守るのか、それとも破壊力抜群の打線をより強化するのか。首脳陣の決断に注目が集まる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)