コラム 2016.09.06. 13:00

待望のプロ初勝利 中日・小笠原慎之介が見せた進化

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1年目から一軍で経験を積んだ中日・小笠原慎之介(C)KYODO NEWS IMAGES

9度目の先発でもぎ取ったウイニングボール


 中日のドラフト1位ルーキー・小笠原慎之介に、待ちに待った瞬間が訪れた。

 9月4日の巨人戦に先発し、プロ初勝利をマーク。5月31日のプロ初先発から実に12試合、9度目の先発でつかみ取ったウイニングボールだった。

 
 いつ初勝利を挙げてもおかしくない投球を続けながら、不運にも勝利の女神はなかなかほほ笑んでくれなかった。

 この日も初回から坂本勇人にレフトスタンド中段まで運ばれる先制2ランを許すなど、序盤に攻め込まれて2回までに3失点。しかも、相手先発は昨季途中から14連勝中で今季無敗のマイコラスということもあって、またも初勝利はお預けかと思われた。

 ところが、そこから小笠原が粘りのピッチングを披露。5回以降は無安打に抑え、自己最多の10三振を奪う力投。終盤の逆転劇を呼び込んだ。

 苦労に苦労を重ね、ようやく手にした初勝利。その味は格別だっただろう。7月には一時、リリーフも経験。再び先発に回った7月24日以降も勝ち星に恵まれず、4連敗を喫した。

 8月14日の阪神戦では4回をもたずに攻略され、自己最多となる5失点で降板。8月20日のDeNA戦では7回2失点と好投しながら、山口俊に投げ負けて敗戦投手になった。しかし、その間も若き左腕は着々と成長を続けた。


試合終盤までマウンドを任されるように


 何よりも、長いイニングを投げられるようになってきたのが大きい。

 初先発からの3試合を振り返ってみると、いずれも3失点以内にまとめながら5回で降板。それがここ3試合は7回、6回、7回と、試合終盤までマウンドを任されるようになった。

 4日の巨人戦も自己最多タイの7回を投じたが、もし6回以前にマウンドを降りていれば、この日の初勝利はなかった。


 勝利が決まった瞬間、先輩たちの手荒い祝福を受けながら、普段はクールにも見える表情を崩して喜びを爆発させた。中日ファンならずとも、初勝利をつかむまで苦労してきた小笠原のその表情を見て、思わず笑みをこぼした野球ファンは多いはずだ。

 どっしりとした下半身とはアンバランスにも見えるあどけない笑顔。それも当然だ。なにせ小笠原はまだ18歳。初勝利をもぎ取るまでの間にも着実に成長してきたように、これからも大投手となるべくまだまだ伸びていくだろう。そんなことを感じさせる最高の笑顔だった。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)

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