シーズン途中にクローザーから先発へ転向
日本ハムの増井浩俊が、9月1日の楽天戦でプロ初の完封勝利を挙げた。
9回を115球、8安打、1四球で2奪三振。シーズン途中にクローザーから先発へと回り、それから5度目の登板で掴んだ快投であった。
今季の増井はストッパーとして10セーブを挙げており、2ケタセーブ&完封勝利という珍しい記録を達成。これは2011年に西武の牧田和久が達成して以来、5年ぶりのことになる。
ちなみに、セーブが制定された1974年以降、球団では初めてという記録のオマケ付きだった。
より難しい「リリーフ→先発」
シーズン途中の配置転換は難しいと言われているが、先発からリリーフに転向するよりもリリーフから先発に回るほうが大変だとも言われる。
というのも、先発投手は1試合を投げ切るスタミナをつけるような調整を春季キャンプからしていくが、リリーフ投手はそういった調整をしないためだ。
それでも、近年では攝津正(ソフトバンク)や山口俊(DeNA)といったところがリリーフから先発へと転身を果たしているように、少ないながらもサンプルとしてあるのも事実。
しかし、増井の場合はリリーフと言ってもクローザーから先発への転向だ。摂津の場合は開幕当初から先発として起用されており、山口俊はシーズン途中にセットアッパーから先発へと回った。増井のようにクローザーから先発へというパターンではない。
また、先発とクローザーを経験した投手といえば前述の牧田も挙げられるが、彼の場合は先発からクローザーへの転向。増井とは真逆のパターンになる。
今季の増井は開幕からセーブこそ重ねてはいたものの、失点をすることも多かった。リリーフ登板した21試合中、無失点で終わったのは13試合。防御率は6.30と信じられない数字が並んでいた。速球やフォークを投げるときに叩きつけてしまうことも多く、ピッチング全体に固さがのようなものが感じられた。
先発に転向してから戻った球のキレ
そんな中、栗山英樹監督は思い切った“策”に出た。増井の一軍登録を抹消し、ファームで約1カ月先発としての調整を命じたのである。
8月4日、一軍復帰登板となったロッテ戦では5回を投げて無失点。勝利こそつかなかったが、先発の役割は果たした。8月11日の西武戦では、7回2失点ながら負け投手。そして迎えた8月18日のオリックス戦、8回途中1失点と好投し、ついに先発初勝利を挙げた。
そこからは何化掴んだような好投を続けて3連勝。投手・大谷翔平の離脱や、吉川光夫、ルイス・メンドーサといったローテーション投手の不調を見事に埋めてみせた。
固さが見られたフォームも、先発転向後は柔らかくなり、速球にキレも戻ってきたように見える。栗山監督の決断も、難しい調整のなかで期待に応えている増井も見事と言う他ない。
一時はソフトバンクにマジック点灯を許したものの、4日の試合終了後にはすぐに消えた。残り19試合で1ゲーム...。十分逆転が可能な位置につけている。
長らくクローザーとしてチームを支えてきた男は、いまや先発投手として逆転優勝のカギを握っている。残りわずかな登板数となるが、かつての守護神はチームを歓喜に導くことができるだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)