新人王レースをリードする新星
9月18日のロッテ戦に先発した日本ハムの3年目右腕・高梨裕稔が、節目の10勝目を挙げた。
初回に先制点を献上したものの、味方にすぐさま同点に追いついてもらうと、その後は安定した投球を披露。6回を被安打3、1失点に抑え、相手エース・涌井秀章に投げ勝った。この勝利により、チームはパ全5球団に勝ち越しを決めたという嬉しいおまけ付きだった。
先発試合は無傷の8勝!
大学では、恵まれた体格を生かし、直球と縦に大きく割れるカーブのコンビネーションを武器にリーグ戦50試合で26勝(15敗)を挙げるまでに成長した。
その後は2013年のドラフト4位で日本ハムに入団。2年目の昨季、5月3日のロッテ戦でプロ初登板・初先発を果たしたものの、3回1/3を4失点(自責点3)で降板。敗戦投手となるほろ苦いデビューとなった。その後は1試合にリリーフ登板したのみで、昨季までの一軍登板はわずか2試合であった。
ところが、今季は開幕から大きく成長した姿を披露。リリーフで安定した投球を続けると、6月8日の広島戦からは先発に転向する。
以降、先発試合では8勝無敗という驚異的な成績。ここまでの今季成績は36試合・103回1/3を投げて10勝2敗、防御率2.44。新人王有資格者の中では断トツの安定感を誇り、新人王のタイトルレースを一歩リードしていると言えるだろう。
ソフトバンクの強力打線を相手に無類の強さを発揮
個人タイトル獲得に近づいているということは、当然ながら、チームへの貢献も大きいということ。優勝チームには、例えば今季の広島・鈴木誠也のような、大きく飛躍するシンデレラ・ボーイ的存在が現れるケースが多いが、日本ハムなら高梨に他ならない。
なにせ、ひとりで8つもの貯金を作っている。しかも、激しく首位を争っているソフトバンクとの対戦では、強力打線を相手に4試合3勝0敗、防御率1.86という無類の強さを誇る。一時は11.5ゲーム差をつけられていた相手との大接戦を演じるまでに至るにあたり、高梨の貢献度は計り知れないだろう。
9月21日と22日には、ソフトバンクとの直接対決が待っている。その差なんと「0ゲーム」、勝率にしてわずか3厘。まさに天王山だ。
その大一番で先発するとみられるのは大谷翔平と有原航平。ただし、ふたりは万全とはいえない状況にある。
大谷は右手中指のまめから復帰後、まだ勝利がない。有原も今季リーグ最速で10勝に到達しながら、その後はまさかの6連敗。彼らにとって、18日のロッテ戦での好投も含め、年齢の近い高梨の活躍は大きな刺激となっているはずだ。
高梨の勢いに乗せられたふたりが本来の投球を取り戻せば、歴史的大逆転Vに大きく近づくこととなるだろう。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)