巨人の敗因は!?
クライマックスシリーズ不要論を吹き飛ばすような大激戦だった。
セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)・1stステージは、敵地の東京ドームで2勝を挙げた3位・DeNAが突破。レギュラーシーズン後半の勢いそのままに巨人を下し、広島とのファイナルへと勝ち進んだ。
1stステージの勝敗を分けたポイントとしては、いくつか挙げられる。第3戦での巨人・鈴木尚広の牽制死や、2試合で計3失点の守護神・沢村拓一の投球、全く機能しなかった巨人の下位打線などなど...。しかし、中でも最も疑問だったのは、シーズン中に一度もなかった「1番坂本、3番村田」という打順である。
高橋由伸監督の秘策
3番坂本、4番阿部、5番村田と続くクリーンアップを解体。第1戦のスタメン発表時には多くのファンを驚かせたが、同時に疑問を感じたファンも多かったはずだ。
打順を“いじる”必要は果たしてあったのだろうか...。
このステージでDeNAが最も警戒した打者が坂本だったことは間違いない。高橋監督はその坂本を「1番」に据えた。
首位打者と最高出塁率の二冠に輝いた男を「1番」に置けば、中軸にチャンスで回る確率も上がる。一発もある男だけに、先頭に置いて相手に脅威を与えることで、このステージを優位に進めたいという目論見もあっただろう。
第1戦、そのねらいは成功する。先頭打者・坂本が出塁すると、5番の長野が先制タイムリー。さっそく打順変更が吉と出たのだ。
坂本自身は奮闘も...
しかし、ステージを通して見るとどうだったか。
チームで最も期待できる坂本が、走者を置いて打席に立ったのは14打席のうちわずかに1度だけ。その打席も、二死二塁の場面だったため敬遠気味に歩かされた。坂本の前を打つのが8番の小林、9番・投手ならつながりが生まれないのは至極当然のことだ。
それでも坂本は14打席のうち、実に8度も出塁。1番打者としての役割は十二分に果たしている。ところが、坂本の次を打つ2番打者にも疑問が残った。
第1戦では亀井義行が、そのあとの2試合は新人の山本泰寛が務めたが、これが2人合わせて10打数1安打と沈黙。要は坂本が出塁しても、好調な村田や阿部、長野といった中軸の前で一旦攻撃が切れてしまう。そのため、打線につながりが生まれることはほぼなかったのだ。
来季以降の教訓として...
メジャーではチームの最強打者を3番に据え、前後の2番と4番にも強打者を置くのが主流。前後を固めることで、3番打者を「Protect(守る)」するのがねらいだ。最近では、2番に最強打者を置くというチームも増えてきている。
今回の坂本に当てはめると、坂本を「Protect」していたのは9番に入る投手と、そして2番を打った亀井、シーズン僅か2打点の山本。その力不足感は否めない。
第3戦で坂本を3番に戻すという考えはあっても良かったのではないか。もしくは、坂本1番にこだわるのならば、2番長野という選択肢も一考するべきだったのではないだろうか...。
巨人敗退の最大の要因は、坂本が警戒の中で2本の本塁打を放ちながら、いずれもソロで2打点に終わったこと。
シーズン中は“動かない”ことで批判もされた高橋監督。その指揮官が珍しく動き、今回はそれが裏目に出た形になった。この教訓を活かし、来季の逆襲へと繋げていくことができるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)