相手投手を打席に迎えた場面で屈辱の降板
MLBナショナル・リーグ優勝決定シリーズは、シカゴ・カブスがロサンゼルス・ドジャースを4勝2敗で下し、71年ぶりのワールドシリーズ進出を決めた。その結果により、ドジャースに所属している前田健太のメジャー1年も終わったわけだが、結果的にシーズン最後の登板となった10月20日(日本時間)の試合は悔しさが残った。
ドジャースの2勝3敗で迎えた第5戦。先発した前田は3回2/3を3安打6奪三振1失点で降板。4回途中での降板自体は不思議なことではないが、相手打者に投手のジョン・レスターを迎えた場面での降板は、あまりにも屈辱的なものだった。レスターには第1打席で高めに浮いたスライダーをレフトの深い位置まで運ばれたが、それでも「この場面で代えるか?」と言いたくなる采配だったことは間違いない。
デーブ・ロバーツ監督は試合後の会見で「すでに76球投げていて、速球の制球も悪くなっていたし、変化球にもキレがなかった」と話したが、前田はこの交代に悔しさをあらわにしたという。
なぜ、あの場面で前田に交代を命じたか。考えられる理由はふたつある。まず、プレーオフに入ってからのロバーツ監督は短期決戦ということもあってか、投手交代のタイミングが早かったことだ。エースのクレイトン・カ―ショーを中3日で先発させたかと思えば、中1日でリリーフとしても起用した。またクローザーのケンリー・ジャンセンを7回から投入するなど、仕掛けが早かった。
シーズンが進むにつれ下降していった成績
ふたつ目の理由は、シーズン終盤にかけて前田の調子が落ちていたことだ。前田は今季、32試合に登板しチーム最多の175回2/3を投げ、チーム最多の16勝、179奪三振という数字を残している。ローテーション投手のなかではエースのクレイトン・カ―ショーに次いで低い被打率.229、1イニングあたりに許した走者の数を示すWHIPも1.14と、十分称賛に値する成績を残した。
しかし、シーズンを半分に分けて見ると、前半戦は18試合8勝6敗、防御率2.95だったが、後半戦は勝ち星こそ8勝をあげたものの防御率は4.25に下降。7月は防御率4.61、8月も4.05と調子を崩し、9月に防御率2.73と持ち直したが、安定感に欠ける投球が続いた。
6イニング以上投げ、自責点を3以内に抑えたクオリティースタートにも変化がある。7月までの21試合中は11試合で記録したが、8月以降は11試合で3試合だけ。先発して6イニング以上投げた試合も3試合しかなかった。こういった点も、プレーオフで前田が早く降板する要因になったのではないだろうか。
初めてのメジャーで中4日の登板が続くなど、環境に馴染もうとするだけでも大変だったかもしれない。だが、それらを乗り越えないと来季以降も首脳陣の信頼をなかなか勝ち取れないだろう。1年を通して安定したピッチングをするためのスタミナをつけることが、メジャー2年目に向けての前田の課題となる。
※数字は2016年10月24日終了時点
文=京都純典(みやこ・すみのり)