前田健太の2016年
メジャー1年目から「16」もの白星を積み重ねたドジャースの前田健太。メジャー屈指の“ピッチャーズパーク”といわれるドジャースタジアムを味方に、シーズンを通してローテーションを守り抜いた。
開幕前の現地メディアの予想では、「10~12勝」という見方が大半。体型や過去の故障歴から、果たして1年間フル稼働できるのかという部分を疑問視する声も少なからずあった。
しかし、蓋を開けてみれば、開幕から4試合・25回と1/3をわずか1失点という神がかり的なスタートを見せると、最終的には16勝11敗。1年目の日本人投手としては、2012年のダルビッシュ有に並ぶ最も多い勝利数を挙げた。
ただし、ポストシーズンでは3試合で先発を任されながら、最長でも4イニングしか投げられず...。首脳陣の期待を裏切る結果に終わった。
レギュラーシーズンでも、32試合のうち7イニングを投げ切ったのは2試合だけ。来季は先発右腕の柱として、より多くのイニングを投げることで救援陣の負担を軽くしたいところだ。
課題は明白?
1年目の課題として浮き彫りになったのが、その「スタミナ」だ。
7月のオールスターゲームを挟んで比較すると、防御率は前半が2.95だったのに対し、後半は4.25と悪化。勝利数はそれぞれ8勝ずつと変わらなかったが、シーズンの後半は打ち込まれる場面もたびたびあった。
6か月間(約180日)で162試合を戦うハードな日程...。慣れない長距離移動や時差などの影響も多分にあっただろう。それでも、これを乗り越えていかなければ長く活躍することはできない。
加えて、試合単位でのスタミナにも課題が残った。
試合序盤は完ぺきな立ち上がりを見せるも、中盤以降に突如崩れるという場面も目立った夏場以降の前田。そこで相手打線の1巡目から順に被打率を見てみると、1巡目は.188、2巡目も.214と抑え込んでいるが、3巡目以降は.338と極端に分が悪くなっている。
打者の目が慣れてくるところで踏ん張りきれず、3打席目以降に捕まる。このパターンを減らしていくことが活躍のカギとなる。
アメリカでも通用した宝刀
前田の投球内容を見てみると、広島時代からの決め球である「スライダー」はメジャーでも十分に通用していた。
ボールの回転軸の角度やスピード、変化量によって球種を自動判別する「PITCH f/x」によると、今シーズンの前田はストレート、スライダー、チェンジアップ、カーブ、ツーシームという5つの球種を投げ分けていた。
それぞれの被打率はストレートが.210、スライダー.171、チェンジアップ.221と通用したボールがある一方で、ツーシームは.282、カーブにいたっては.398とよく打たれていることが分かる。
中でも、カウントを整えるためのカーブが甘く入り、それを痛打されるというケースも多かった。来季に向けては、その多彩な変化球の“配球”という部分もカギとなってくるだろう。
1年目からいきなり32試合に登板し、ワールドシリーズにあと2勝というところまで迫った経験は今後必ず生きてくるだろう。来季のさらなる飛躍に期待したい。
▼ 前田健太
生年月日:1988年4月11日(28歳)
身長/体重:185センチ/79キロ
投打:右投右打
ポジション:投手
経歴:PL学園高-広島(06年・高D1)-ドジャース
[今季成績] 32試 16勝11敗 奪三振179 防御率3.48
文=八木遊(やぎ・ゆう)