コラム

筒香嘉智に見る、三冠王への“序章”...

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球界を代表するスラッガーに成長した筒香の“この先”...(C)KYODO NEWS IMAGES

日本を代表する主砲へ


 打率.322、本塁打44、打点110...。圧巻の成績でセ・リーグの本塁打王と打点王の二冠に輝いたのが、DeNAの主砲・筒香嘉智である。

 今シーズンは主将で4番という大役を担った25歳のスラッガーは、プレッシャーにも負けず申し分ない成績を記録。チームを初のクライマックスシリーズ進出へと導く原動力となった。

 オフには推定3億円で契約更改。2億円アップという上がり幅は大きな話題となったが、文句なしの活躍ぶりだっただろう。今や横浜を背負うどころか、日本を代表する主砲である。



激増した“逆方向”への本塁打


 大きな飛躍を遂げた筒香の成績を細かく見ていくと、やはり飛躍につながるある要素が隠されていた。それは、“レフト方向への本塁打数”である。

 昨シーズンは、それまでの自己最多となる24本塁打をマークした筒香。しかし、その内訳を見てみると、ライト方向が実に21本。センター方向が3本で、レフト方向は0本という極端な“引っ張り傾向”にあった。

 ところが、今シーズンはライト方向に26本、センター方向が7本で、レフト方向はなんと11本。4~6号、33~35号は3本連続して左方向へ放り込むなど、いわゆる“逆方向”への本塁打の激増が、自己最多を大きく更新するシーズン44本塁打につながったことは間違いない。


トリプルクラウンの資質


 逆方向に強い打球を飛ばせることは、強打者の条件のひとつだ。本塁打王と打点王の二冠を獲得し、首位打者争いでも3位にランクインした筒香には、2004年の松中信彦(元ソフトバンク)以来となる三冠王への期待も膨らむ。

 松中というと、天才的な内角のさばき方が最大の特徴。通常ならファウルになるようなボールも、ギリギリ残してスタンドまで運ぶ技術が印象的な打者だった。驚異的な長打力で左方向への本塁打もあったが、どちらかというとプルヒッタータイプといえる。

 それでも、松中以前に三冠を獲得した落合博満(元ロッテほか)やランディ・バース(元阪神)は、まさに“逆方向タイプ”。2人がそろって三冠王になった1985年、1986年に放った安打の打球方向を見てみよう。


【三冠王の安打方向を振り返る】
▼ 落合博満
<1985年>
レフト方向  82安打(29本塁打)
センター方向 24安打(2本塁打)
ライト方向  54安打(21本塁打)
※内野安打  9安打

<1986年>
レフト方向  68安打(29本塁打)
センター方向 36安打(5本塁打)
ライト方向  40安打(16本塁打)
※内野安打  6安打

▼ ランディ・バース
<1985年>
レフト方向  37安打(18本塁打)
センター方向 48安打(9本塁打)
ライト方向  84安打(27本塁打)
※内野安打  5安打

<1986年>
レフト方向  68安打(24本塁打)
センター方向 46安打(8本塁打)
ライト方向  56安打(15本塁打)
※内野安打  6安打


“逆方向”が異常に多かったレジェンドの2人


 こうして見ると、右打者である落合のライト方向、左打者であるバースのレフト方向への安打数と本塁打数が尋常ではないことは一目瞭然だろう。

 1986年のバースに至っては、逆方向への本塁打のほうが圧倒的に多いという、一般的には考えられない“異常事態”。落合もまた、初めて三冠王を獲得した1982年には32本塁打のうち20本をライト方向へと放っており、バース同様に逆方向への本塁打が多いという“逆転現象”を起こしている。

 落合の場合は、逆方向への打球を警戒するあまり、本来得意な内角への投球が増えたことを本人はほくそ笑んでいたという逸話もある。単純にいえば苦手なコースを作らないことが大打者への道ということになるが、ただ逆方向に打てるだけでは「シングルヒットならOK」と判断されるケースもあるだろう。やはり、逆方向に“フェンスオーバーさせる力”が重要なのだ。

 そういう意味では、今季の筒香はその“領域”に足を踏み入れたと言える。三冠王という大記録達成への期待も膨らむばかりだ。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)

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