コラム 2016.12.20. 17:00

日本ハムの選択は…陽岱鋼の補償を考える

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背番号の「2」を指で示し、ポーズをとる陽岱鋼(右)と高橋監督(C)KYODO NEWS IMAGES

日本ハムの決断は?


 「巨人・陽岱鋼」が誕生した。

 19日、台湾の英雄は都内のホテルで高橋由伸監督と並んで入団会見。5年総額15億円超えの大型契約と見られ、日本ハム時代の推定1億6000万円からの大幅アップ。同時に巨人から日本ハムに28選手のプロテクトリストが届いた。

 旧所属先球団での年俸順により、補償の内容が変わってくるFA移籍。“Bランク”に当たる陽には、人的補償が発生するケースも想定される。

 仮に日本ハムが金銭補償のみを選択したら、巨人から支払われるのは陽の旧年俸1億6000万円の0.6倍にあたる9600万円。これが人的補償ありの場合は0.4倍で金銭補償額は6400万円となる。その差額は「3200万円」だ。(※金額は推定)

 日本ハムにおけるBランク以上の選手のFA移籍を振り返ってみると、ここ10年間で人的補償を選択したのは2013年の鶴岡慎也(→ソフトバンク)だけ。2006年の小笠原道大(→巨人)や、2010年の森本稀哲(→横浜)、2014年の大引啓次(→ヤクルト)は金銭のみの補償を選択している。

 なお、日本一に輝いた今季は所属選手の年俸が軒並み上昇していることもあり、今回も金銭補償が有力視されている。

 しかし、巨人はこのストーブリーグで史上初となるFA3選手同時獲得などの大型補強を敢行。過剰戦力とも言える状態にあるため、一軍実績のある即戦力選手や有望若手選手がプロテクトから外れる可能性も高い。プロテクト外と予想され、かつ日本ハムの補強ポイントと合致する選手というと誰になるだろうか?


高齢化が進む二塁手


 まず注目は二塁手だ。日本ハムの中心選手であり、不動のレギュラー田中賢介も来季で36歳。今季の二塁手としての出場数を見てみると、1位が田中の142試合で、それに次ぐのが飯山裕志の20試合。内野のバックアッパー役を務めてきた飯山も、来季で37歳になる。

 その他では7試合に出場した大累進や期待のプロスペクト・21歳の渡辺諒が控え、ドラフトでは2位で六大学屈指の遊撃手・石井一成(早大)を指名しているが、即戦力の二塁手がプロテクト漏れしていたら狙いどころだろう。

 ここ数年低迷しているかつての盗塁王・藤村大介は、年俸1000万円とコスト面では魅力的な選手であるものの、早いもので来季28歳。伸びしろを考えたら今季50試合に出場した24歳の吉川大幾や、イースタンで142打席ながらも打率.320を記録し、一軍も経験した22歳の辻東倫らが候補に挙がる。

 巨人はドラフト1位で大学No.1内野手・吉川尚輝(中京学院大)を指名。今後しばらく、二塁手レギュラー候補の強化指定選手として優先的に起用されることが濃厚だ。さらに昨年のドラフト2位外野手・重信慎之介も二塁転向挑戦中のため、吉川大幾や辻といった若手内野手が揃ってプロテクトされる可能性は限りなく低いだろう。


補強ポイントの“左腕”は...


 また、左腕不足に悩まされている近年の日本ハム。いわば最大の補強ポイントとなるが、今オフは巨人とのトレードですでに92年生まれの若手サウスポー・公文克彦を獲得。ドラフトでも1位の堀瑞輝(広島新庄高)から始まり、3名の高校生左腕を指名(うち入団は2名)したが、即戦力の左腕は是が非でも欲しいところだ。

 と言っても、巨人も左のセットアッパー・山口鉄也の後継者不在に苦しんでおり、今オフはソフトバンクから森福允彦を獲得。若手左腕を見渡しても、山口以外に今季一軍で20試合以上登板したのは2年目の戸根千明のみだ。

 そのため、94年生まれサウスポーコンビの今村信貴、中川皓太といった当落線上の若手左腕は、日本ハムのチーム事情を加味してもプロテクト有力ではないだろうか。


 日本ハムの資金面から、巨人は阿部慎之助や内海哲也といった高年俸ベテラン選手はリストから外しても...。という声も聞く。

 だが、日本ハムといえばドラフトで「その年の1番いい選手を指名する」と常々公言するチームだ。巨人側も下手なリスクを犯さず、まずは年俸に関係なく「1番いい選手からプロテクトしていく」のではないだろうか。基本的にFA補強というのは現有戦力を上げるためであり、その補強のためにあえて現有戦力を落とすリスクを犯すというのは考えにくい。

 補償内容は年明けの発表が濃厚。果たして、日本ハムの決断はいかに...。


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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