昨季まで10年連続全試合出場 ショートで史上初の3年連続フル出場
このオフ、去就が注目されていた阪神の鳥谷敬が、阪神残留を決めた。
昨季、ペナントレースは2位に終わったが、クライマックスシリーズで1引き分けをはさみ5連勝。日本シリーズでソフトバンクに敗れたものの、今季こそは10年ぶりのリーグ優勝、30年ぶりの日本一と意気込む阪神にとってこれ以上ない朗報だ。
鳥谷の実績は改めて説明するまでもないだろう。
歴代3位の1322試合連続出場を継続中。昨季まで10年連続で全試合に出場し、昨季はショートの選手として史上初の3年連続フルイニング出場を果たすなど、10年に渡り阪神のショートは鳥谷が守り続けているのだ。
打撃成績は、昨季までの11年間で通算打率.285、120本塁打。この数字だけを見ると特筆すべきものとは言えないが、鳥谷の特長は出塁能力にある。
2011年に.395でリーグ最高出塁率に輝くなど、最近4年はすべてリーグ5位以内に入っている。昨季も、リーグ3位だったが自己最高の出塁率.406を記録した。
鳥谷が高い出塁率を残している要因は、屈指の選球眼にある。昨季こそ、広島の丸佳浩がリーグ最多四球を選んだが、11年から13年までは鳥谷がリーグで最も多く四球を選んだ(13年に記録した104四球は球団記録)。昨季まで通算の出塁率は.372と、打率と1割近い差があるのだ。
フルカウント時にも選球眼を発揮 選んだ四球は三振の3倍以上
鳥谷の選球眼は、フルカウントの時にも際立っている。
昨季、フルカウント時に鳥谷が喫した三振は16に対し、四球は三倍以上の51。
規定打席に達した両リーグの選手の中で、フルカウントに選んだ四球が三振の三倍以上もあるのは鳥谷だけである。参考までに、リーグ最多四球の丸でもフルカウント時は28三振50四球と、鳥谷より三振が多く、四球は少ない。
では、もし鳥谷がメジャー移籍を選択していたら、阪神打線にどのような影響があっただろうか。
昨季、阪神のチーム全体の出塁率はリーグ3位の.335。鳥谷の四球数87を引くとチームの出塁率は.324まで下がる。鳥谷の成績をすべて引くのは極端だが、四球数をリーグで規定打席に達した選手の平均四球数50として計算しても、チーム全体の出塁率は.330まで下がるのだ。
鳥谷が移籍した場合、センターで再三好守を見せた大和をショートにコンバートするといった話もあったようだが、その心配もなくなった。このオフ、目立った補強はないものの、鳥谷が移籍した時の影響を考えれば、阪神のストーブリーグはひとまず成功と言えるのではないだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)