日米の男子ゴルフツアーで活躍したゴルフ界のレジェンド・丸山茂樹氏。野球界にも幅広い交友関係を持つ丸山氏に、MLB日本人選手の苦労、イチロー、そしてケガとの戦いについて聞いてみた。丸山氏が語った『アメリカで活躍することの大変さ』とは…。
<丸山茂樹氏インタビュー(後編)>
——アメリカの生活で長く続けるコツや難しさは?
「難しさは、やっぱり語学と食ですね。やっぱり日本は、世界中の食事が美味しい。中国は中華料理、韓国で韓国料理は美味しくても、他の料理はそこまで美味しいわけじゃない。日本って中華料理、韓国料理、フランス料理、全ての世界のご飯が美味しいわけですよ。向こうでいくらお金を稼いで、いいところに(食事に)行っても、美味さが知れてるんですよ」
——寿司が有名だよって言っても違うわけですもんね。
「これで500ドル取るのかよって思っちゃう。だからそれが一番酷だったかな。あとは友達。言葉、食事、友達。ストレスが溜まって、みんなでどこか行きたいと思ってもできない。左見ても、右見ても、キャディかマネージャーしかいませんでしたから。その時期は、修行だと僕は思ってました」
——海外で戦うアスリートは、ストレスを抱えながら競技をやらなければいけない。
「本当に腹をくくらないと、そこから飛び出したくなる。イチロー君が偉いのは、ヤンキースという最高の舞台から降りても、自分をあそこに置いとくというのは、やっぱり凄いと思います。僕だったら日本で最後1、2年やって辞めようかなとか思っちゃいますから」
——丸山さんが、イチロー選手だったら日本に帰っている?
「(イチローは)根性ありますよね。僕はドライバーの病気にかかったときに、『これ無理だな』と思った瞬間に帰っちゃいましたから。これ以上いても煮詰まる。だからシード落としてもQスクール※1からいって、這い上がろうという気持ちにはなれませんでした。野球選手が凄いのは、マイナーに落とされても我慢するところ。屈辱ですよね。プロゴルファーでいうならシードを落とすと、ウェブドットコムツアー※2というのが二部にありますが、出場したくないですもん」
——今シーズンの野球界でもメジャーから帰ってきた選手が多くいます。
「黒田(博樹)君もそうだし、松井稼頭央君も凄い頑張っていますよね。嬉しいは嬉しいです。松井君には、(精神的に)打たれきったときにすぐに帰っちゃえばいいのにって話したんですけどね。みんなやっぱり名残惜しいのかな」
——丸山さんは日本に帰ったときにどういう気持ちでプレーされてたのですか?
「自分が煮詰まったときに話す相手がいるのは、心から良かったです。僕らの英語だと会話が少し成立しても、心の問題まで話せない。自分の想いを話せるというのは、ストレスがなくなりましたよね」
——さきほどからトップアスリートの名前が数々出ていますが、何かアドバイスを送ったり、受けたりということは?
「番組でイチロー君にケガをしない秘訣、長続きする秘訣を聞いたときには、彼はアメリカに行ったからって、アメリカ人と同じ体になろうとか思わない方がいい。自分のポテンシャルを越えるようなトレーニングをすると、体を壊したりする。だから、(これまでと)同じようなことを続けることが、長続きするコツだと言ってくれましたね」
——ケガの話が出ましたが、予防の重要性であったり、どういうところを注意してプレーされましたか?
「今思えば、ある意味自分の体力、限界を超えてしまう練習のしすぎもよくないのかなと思います。テーマを決めてある時間練習して、やった方がケガが少ないと思う。僕なんかはもう、星飛雄馬の世界でしたね。1人で孤独に、朝から晩まで、手がまめだらけになるまで練習していました。でも長続きするのには、密な練習が一番いいのかなと思うんですよね。今日はこういうテーマでやろう。2時間なら2時間、きちんと球を打つとか。僕なんか6時間、7時間、アホみたいに球を打っていたから、やっぱりケガも多かった」
——当時はそういうトレーニングが主流だったんですね。
「フィジカルなトレーニングはなかったですからね。水飲むな、うさぎ跳びしろみたいな時代。今は全部ペケ(笑)。水はしっかり飲め。うさぎ跳びはするなでしょ。(正しいことは)メディアを通じて、みんなが知るようになりました。そういうのを取り入れて、体のコンディショニングをきちんとした上で練習した方が長続きする気がします」
——丸山さん自身もかなりケガに苦しんでいましたね。
「(最近も)膝が凄いダメで、ちょっと歩くと水が溜まってたんですよ。ただある時、コンペでプレゼントされた大山式(足裏に着用する姿勢矯正具)というアイテムを試したんですね。自分で試してみなければ分からなかったので、最初は痛くてダメだと思いましたが、4日、5日試しているうちに段々とよくなった。バランスが凄くよくなってきて、歩いても歩いても水が溜まらなくなりました」
——アスリートにとって膝は命ですけど、ゴルフはまさにそうじゃないですか?
「どこがどうよくなったかは、よくわからないんですよ。僕の膝を触ってもらえばわかると思うんですけど、ずっとギシギシいっているんで、月に1本ヒアルロン酸(の注射)を打っていたのが、もう1年以上打ってないですから」
——故障と向き合う中では、そういうアイテムとの出会いも重要なんですね
「僕の中では助けられたアイテムの1つだったですね。自分を相当ヘルプしてくれました」
——アスリートにとって、自分が抱えているケガが良くなっていくことは、どんな感覚なんですか?
「ちょっと驚きでしたよね。(医師の治療以外の)解決方法が全くなかったわけですから。それがポンっとゴムを付けて、歩いているだけで一日のうちで体のバランスが取れるなんて、誰もが想像しないじゃないですか。」
——スポーツだけでなく、人にとってバランスというものを修正していくということは、それほど重要なことなんですね。
「気付かない人がほとんどだと思うけど、どこかが痛い人はバランスが悪かったりしている。その根源がどこにあるかということを、追求して治さないといけないわけだから、色んなことを試すことは大事だと思います。」
(※1)Qスクール…ウェブドットコムツアーへのシード権を獲得するために参加する予選会。
(※2)ウェブドットコムツアー…米PGAツアーが運営する下部ツアー。賞金額、試合数は小規模だが、上位25名に翌年のPGAレギュラーツアーへのシード権が与えられる。
<丸山茂樹氏インタビュー(後編)>
——アメリカの生活で長く続けるコツや難しさは?
「難しさは、やっぱり語学と食ですね。やっぱり日本は、世界中の食事が美味しい。中国は中華料理、韓国で韓国料理は美味しくても、他の料理はそこまで美味しいわけじゃない。日本って中華料理、韓国料理、フランス料理、全ての世界のご飯が美味しいわけですよ。向こうでいくらお金を稼いで、いいところに(食事に)行っても、美味さが知れてるんですよ」
——寿司が有名だよって言っても違うわけですもんね。
「これで500ドル取るのかよって思っちゃう。だからそれが一番酷だったかな。あとは友達。言葉、食事、友達。ストレスが溜まって、みんなでどこか行きたいと思ってもできない。左見ても、右見ても、キャディかマネージャーしかいませんでしたから。その時期は、修行だと僕は思ってました」
——海外で戦うアスリートは、ストレスを抱えながら競技をやらなければいけない。
「本当に腹をくくらないと、そこから飛び出したくなる。イチロー君が偉いのは、ヤンキースという最高の舞台から降りても、自分をあそこに置いとくというのは、やっぱり凄いと思います。僕だったら日本で最後1、2年やって辞めようかなとか思っちゃいますから」
——丸山さんが、イチロー選手だったら日本に帰っている?
「(イチローは)根性ありますよね。僕はドライバーの病気にかかったときに、『これ無理だな』と思った瞬間に帰っちゃいましたから。これ以上いても煮詰まる。だからシード落としてもQスクール※1からいって、這い上がろうという気持ちにはなれませんでした。野球選手が凄いのは、マイナーに落とされても我慢するところ。屈辱ですよね。プロゴルファーでいうならシードを落とすと、ウェブドットコムツアー※2というのが二部にありますが、出場したくないですもん」
——今シーズンの野球界でもメジャーから帰ってきた選手が多くいます。
「黒田(博樹)君もそうだし、松井稼頭央君も凄い頑張っていますよね。嬉しいは嬉しいです。松井君には、(精神的に)打たれきったときにすぐに帰っちゃえばいいのにって話したんですけどね。みんなやっぱり名残惜しいのかな」
——丸山さんは日本に帰ったときにどういう気持ちでプレーされてたのですか?
「自分が煮詰まったときに話す相手がいるのは、心から良かったです。僕らの英語だと会話が少し成立しても、心の問題まで話せない。自分の想いを話せるというのは、ストレスがなくなりましたよね」
——さきほどからトップアスリートの名前が数々出ていますが、何かアドバイスを送ったり、受けたりということは?
「番組でイチロー君にケガをしない秘訣、長続きする秘訣を聞いたときには、彼はアメリカに行ったからって、アメリカ人と同じ体になろうとか思わない方がいい。自分のポテンシャルを越えるようなトレーニングをすると、体を壊したりする。だから、(これまでと)同じようなことを続けることが、長続きするコツだと言ってくれましたね」
——ケガの話が出ましたが、予防の重要性であったり、どういうところを注意してプレーされましたか?
「今思えば、ある意味自分の体力、限界を超えてしまう練習のしすぎもよくないのかなと思います。テーマを決めてある時間練習して、やった方がケガが少ないと思う。僕なんかはもう、星飛雄馬の世界でしたね。1人で孤独に、朝から晩まで、手がまめだらけになるまで練習していました。でも長続きするのには、密な練習が一番いいのかなと思うんですよね。今日はこういうテーマでやろう。2時間なら2時間、きちんと球を打つとか。僕なんか6時間、7時間、アホみたいに球を打っていたから、やっぱりケガも多かった」
——当時はそういうトレーニングが主流だったんですね。
「フィジカルなトレーニングはなかったですからね。水飲むな、うさぎ跳びしろみたいな時代。今は全部ペケ(笑)。水はしっかり飲め。うさぎ跳びはするなでしょ。(正しいことは)メディアを通じて、みんなが知るようになりました。そういうのを取り入れて、体のコンディショニングをきちんとした上で練習した方が長続きする気がします」
——丸山さん自身もかなりケガに苦しんでいましたね。
「(最近も)膝が凄いダメで、ちょっと歩くと水が溜まってたんですよ。ただある時、コンペでプレゼントされた大山式(足裏に着用する姿勢矯正具)というアイテムを試したんですね。自分で試してみなければ分からなかったので、最初は痛くてダメだと思いましたが、4日、5日試しているうちに段々とよくなった。バランスが凄くよくなってきて、歩いても歩いても水が溜まらなくなりました」
——アスリートにとって膝は命ですけど、ゴルフはまさにそうじゃないですか?
「どこがどうよくなったかは、よくわからないんですよ。僕の膝を触ってもらえばわかると思うんですけど、ずっとギシギシいっているんで、月に1本ヒアルロン酸(の注射)を打っていたのが、もう1年以上打ってないですから」
——故障と向き合う中では、そういうアイテムとの出会いも重要なんですね
「僕の中では助けられたアイテムの1つだったですね。自分を相当ヘルプしてくれました」
——アスリートにとって、自分が抱えているケガが良くなっていくことは、どんな感覚なんですか?
「ちょっと驚きでしたよね。(医師の治療以外の)解決方法が全くなかったわけですから。それがポンっとゴムを付けて、歩いているだけで一日のうちで体のバランスが取れるなんて、誰もが想像しないじゃないですか。」
——スポーツだけでなく、人にとってバランスというものを修正していくということは、それほど重要なことなんですね。
「気付かない人がほとんどだと思うけど、どこかが痛い人はバランスが悪かったりしている。その根源がどこにあるかということを、追求して治さないといけないわけだから、色んなことを試すことは大事だと思います。」
(※1)Qスクール…ウェブドットコムツアーへのシード権を獲得するために参加する予選会。
(※2)ウェブドットコムツアー…米PGAツアーが運営する下部ツアー。賞金額、試合数は小規模だが、上位25名に翌年のPGAレギュラーツアーへのシード権が与えられる。