新戦力加入で競争激化
20日にオープン戦が開幕し、実戦メインの調整が熱を帯びてきた。この時期は新加入選手や若手を見定める段階で、中でも各チームの“正中堅手争い”が盛り上がっている印象を受ける。
セ・リーグ王者のヤクルトは、前オリックスの坂口智隆がバットでのアピールを続けている。最多安打タイトルの実績を持つヒットメーカーは、実戦4試合で9打数7安打と健在ぶりをアピール。これには真中監督も「左も右も気にしない。(レギュラー争いで)一歩抜けている」と賛辞を惜しまない。
同じく新人外野手の山崎晃太朗も高評価。日大出身の左投げ左打ち、背番号『31』の“真中二世”。非凡な打撃センスは「1年目の青木宣親以上」との声もあり、守備・走塁も無難にこなし、開幕スタメンを虎視眈々と狙っている。実戦では左翼に入ることが多いが、こちらも本職は中堅。昨年のリーグ制覇に貢献した上田剛史、比屋根渉も含め、今後もアピール合戦が続きそうだ。
覇権奪還を目指す巨人には、重信慎之介というフレッシュなスター候補が出現。ドラフト2位加入の韋駄天は、打撃だけではなく走塁と守備でも積極姿勢を披露。一気に開幕スタメンを狙える位置につけ、高橋由伸監督は開幕戦での1番抜擢について、「あるでしょうね」と笑みをこぼした。
昨季ブレークした立岡宗一郎も負けじと実戦で結果を残している。両者がこのまま好調を維持できれば、「1番中堅・立岡」、「2番左翼・重信」の可能性も。ただ、巨人には外野手登録のギャレット・ジョーンズを筆頭に、長野久義、亀井義行、レスリー・アンダーソンら長打力を備えた外野陣が揃う。長いスパンで考えるなら、タイプの似た立岡、重信、橋本到、そこに大田泰示を加えた面々で中堅ポジションを争うことになりそうだ。
阪神では横田慎太郎が猛アピール。売り出し中の3年目外野手は、対外試合3戦連続マルチ安打に加え16日の楽天戦では本塁打もマーク。今後エース級との対戦でも結果を残すことができれば開幕スタメンがグッと近づく。
二軍では右翼を守ることが多かった横田だが、一軍には福留孝介がいるため21日のヤクルト戦では中堅の守備に就いた。ここには2年目の江越大賀もおり、今キャンプは内野メインで調整を続ける大和も健在。左翼候補のネルソン・ペレス、伊藤隼太、中谷将太。新人の高山俊や板山祐太郎を含め、阪神の外野手争いはシーズン開幕後も続きそうな情勢だ。
大島洋平と藤井淳志による中日の中堅争いからも目が離せない。今季は5月で35歳になる藤井が元気。実戦では走塁面でのボーンヘッドなどもあったが、バットでは快音を響かせている。14年に打率.318をマークした大島は、昨季の打率が.260と低迷。打撃の波を極力なくし、再び不動の切り込み隊長に君臨したい。
広島は侍ジャパンにも選出された丸佳浩が中心。DeNAはラミレス監督が「2番中堅」での起用を明言した梶谷隆幸が左脇腹を痛め、現在二軍調整中。同ポジションを主戦場とする荒波翔、桑原将志、関根大気らは、このチャンスを活かしたいところだ。
実戦6試合で7打点のオコエ、オリックスの同期対決も熱い
パ・リーグの中堅手争いも見どころ満載。楽天のオコエ瑠偉は、阪神との練習試合で藤浪晋太郎から適時打をマーク。まだまだ粗削りな部分はあるが、紅白戦含む実戦6試合で7打点と勝負強さを発揮。失敗と成功を繰り返しながら着実に開幕一軍入りへの階段を登っている。
負けじと21日の中日戦では、1番右翼で先発出場した2年目の福田将儀が3安打2得点1盗塁と猛アピール。こちらも俊足が売りで本職は中堅。聖沢諒も含め、楽天の中堅争いも熱を帯びている。
オリックスでは駿太と宮崎祐樹の6年目同期対決が熱い。21日の韓国・北山との練習試合では、駿太が5打数2安打2盗塁、宮崎が1発含む4打数3安打3打点と互いに大暴れ。駿太はスピードで、宮崎は持ち前のパンチ力を見せつけた。
少し寂しいのがロッテ。引き続きポジションを争う岡田幸文、荻野貴司、加藤翔平のバットが湿りがち。伊志嶺翔大は20日の中日戦で本塁打を放ったが、こちらもその後は音無しと長続きしていない。両翼には角中勝也、清田育宏が健在。中堅手が固定できれば今以上にチーム力は上がるはずだ。
王者ソフトバンクは、B班調整の正中堅手・柳田悠岐が順調に回復。A班では3年目の上林誠知が順調に調整を重ねており、若武者の成長度合いによっては外野の配置転換も考えられる。日本ハムは3年目の岡大海と2年目の浅間大基が揃って故障離脱中。それでも今キャンプでは陽岱鋼が元気で、栗山英樹監督は「ダイ(岱鋼)にはキャリアハイの成績を残してほしい」と期待を寄せる。
西武はシーズン最多安打記録を塗り替えた秋山翔吾が不動の存在で、今年もヒット量産に期待したいところだ。
この先の実戦では各チームのエース級が登場予定。当落線上にいる選手たちは対応力が問われることになる。どのポジションにも言えることだが、より高いレベルで争いながら、チーム力を高めてほしいところだ。