智弁和歌山時代は絶対的なエース
熱戦繰り広げられるセンバツ高校野球。3月20日に行われた滋賀学園(滋賀)対桐生第一(群馬)の一戦は、桐生第一の後半の粘りをかわし、滋賀学園が9-5で勝利した。
滋賀学園にとっては、これが甲子園初勝利。続く2回戦も釜石(岩手)に9-1で勝利し、準々決勝に駒を進めた。甲子園は09年夏に初出場を果たしているが、この時彼らの前に立ちふさがったのは、智弁和歌山・岡田俊哉(中日)だ。
岡田は初出場の滋賀学園を僅か2安打に抑える好投を披露。智弁和歌山・高嶋監督は例年複数投手をローテーションすることで有名だったが、岡田は「絶対的エース」としてマウンド上に君臨。全日本選抜のエースにも選ばれ「岩瀬仁紀2世」と絶賛された岡田は、中日の1位指名で2009年に鳴り物入りでプロの門を叩いた。
苦しみながらも4年目に台頭
しかし、その後岡田を待ち受けていたのは順風満帆の野球人生とは程遠く、厳しいものだった。どの競技においても、高校時代に脚光を浴びる選手には「早熟の天才」の言葉がよぎる。
大谷翔平を始め、圧倒的なタレント性(もちろん努力は皆している訳だが)を有していれば、プロ転向後直ぐに眩い閃光を放つことも可能だろうが、「岩瀬仁紀2世」と評された岡田にとって、その壁を乗り越えることは容易ではなかった。
「今思えば、天狗だった」。そう語る岡田は、高校時代に伸びきった鼻頭を折られながらも一から真摯に野球と向き合い、2013年にデビューを飾る。シーズン66試合に登板し、15ホールド、防御率2.79を記録した。
2014年には満足の行く成績を残すには至らなかったが、開幕ローテ入りを果たす。苦しい時期を乗り越え、着実な成長を遂げてきた岡田。
迎える今季、彼は「自分がキーマンだ」と言い聞かせながら、自分のことだけでなく、チーム全体に目配りしながら野球に取り組んでいると言う。
「憧れを力に変えてきた部分がある。だから、これからは自分が大きな背中を見せていきたい」。甲子園を沸かせた若武者も今年で25歳。入団当時、圧倒的な力量差の前に味わった挫折と、傍にあった先輩達への羨望の眼差し。自分のことだけを考えた月日は、新たなステージを登り、今はチーム全体に意識を及ばせる。
自身も黒星を喫するなど阪神との開幕カードを1勝2敗と負け越した中日。不安要素も多いが、チームは小さなきっかけで時に劇的な変化をする。その発端に、岡田俊哉の存在があれば、中日の今後が益々面白くなる。