ニュース 2016.04.04. 13:30

メジャーでは禁止も、有識者たちの声は…?物議を醸した日本ハム・田中賢介の“併殺崩し”

無断転載禁止
メジャーでも大きな議論を呼んだ“併殺崩し”の是非

「危険行為」か、「勝利への執念か」…


 4月3日(日)、東京ドームで行われた日本ハム-ソフトバンクの3回戦は、日本ハムが6回にレアードの3ランなどで4点を挙げて逆転。粘るソフトバンクを振り切り、最終的には4-3で勝利を収めた。

 ところが、そのレアードの逆転3ランの直前、試合の流れを変えた“あるプレー”が試合後に大きな議論を呼ぶことになる。

 日本ハムが1点を追う6回裏の出来事。先頭の西川が四球で出ると、続く田中賢の打席でランエンドヒットに成功。無死一三塁と同点のチャンスをつくる。

 迎えるは4番の中田。1ストライクからの2球目を振っていくも、打球は三塁線へのゴロに。打球を処理した松田は三塁走者の西川を牽制しつつ、併殺を狙って二塁へ送球。ベースカバーに入った川島が送球を受けて二塁をアウトに取るも、一塁走者・田中のスライディングを両足に受けて転倒。川島はその場に倒れこみ、その間に三塁走者が生還した。

 このプレーにソフトバンクの工藤公康監督はベンチを飛び出して猛抗議。田中のスライディングはベースではなく野手の足を狙った「危険行為」であったとし、約5分間に渡って審判に詰め寄るも、判定はそのまま。日本ハムの得点が認められる。

 その後、試合は一死一塁から仕切り直しとなるも、ソフトバンク先発の武田は大谷に安打を許してピンチを広げると、谷口の内野ゴロを挟んで7番のレアードに逆転3ランを被弾。ソフトバンクにとってはまさに悪夢の6回となってしまった。

 川島はその後に試合から退き、検査の結果「右下腿部打撲」と診断。ソフトバンク側としては、「走路を外れた危険な行為」ということで意見書の提出も辞さない構えを見せており、工藤監督も「残念」と語る。

 一方で日本ハムの栗山監督は、逆転劇を呼びこむ“勝利への執念”として田中の走塁を称賛。監督として選手を擁護した。



プレーヤー、OBからは「上手い」の声


 このプレーに関してはファンの間でも大きな議論を呼んだ。特にスライディングを受けた川島が負傷退場となったこともあり、ネット上の一部のファンからは、田中に向けた心ない言葉も見受けられた。

 田中のスライディングは「危険行為」だったのか、「勝つためのプレー」だったのか…。このプレーに関してコメントをしたプロ野球解説者たちの見解を見てみると、実は田中を擁護する声というのが多い。

 昨日の試合にHTB北海道テレビの解説として関わっていたプロ野球解説者の岩本勉氏は、「工藤監督には申し訳ないけれども…」としながらも、「田中賢介のスライディングが上手いとしか言いようがない」と見解を述べる。

 スライディングのスタイルに関しては明確な規定がないことを挙げ、「体の一部がベースに向かっていれば、スライディングとして成立することになっている」と説明。「川島選手が故障してしまっているだけに難しいが、走者側の言い分としては危険を回避しながら、体を避けながらのスライディングだった。ただし、守備側からすれば完全に守備を妨害するためのスライディングとして映る」とし、「どちらを取るかはアンパイアのジャッジ」と最後は審判の判断が絶対だという結論に導いた。


 夜のニュースでも、もちろんこのプレーが話題に。CS放送・フジテレビONEで放送されている「プロ野球ニュース」では、大矢明彦氏と高木豊氏がこのプレーに関してコメントした。

 大矢氏も、岩本氏同様に「田中賢介が上手かったと思う」という見解を示し、元内野手の高木氏に話を振る。受けた高木氏も、「川島が一塁に投げるとしたら避けられたと思うが、ホームへ送球しようとしていた。そこを審判がどうジャッジしたのかが問題」としながらも、「ベースを抱え込むように足だけ出していたのが田中の上手さ」とこちらも田中のスライディングを称賛した。



“本場・メジャー”では?ダルビッシュが見解


 ゲームから一夜明けた4日、海の向こうアメリカからもこのプレーに関する意見が出た。発信者はレンジャーズのダルビッシュ有だ。

 物議を醸すプレーを確認したダルビッシュは、「川島さんが右足でベース踏んでしまってるから逃げ場がなくなってる感じ。 左足で踏んでいれば逃げ場が出来るからあそこまではなってないはず」とコメント。ボールの受け方の方を問題視する。

 内野手として、“併殺崩し”は常に頭に入れておかないと、というダルビッシュ。田中のスライディングに関しても、「崩しに行ってますよ。故意なのは確かですが、怪我させには行ってないです。スライディングが優しい」と独特の表現で田中のプレーを擁護した。


 メジャーでは当たり前のように行われていた“併殺崩し”。かつては岩村明憲や西岡剛といった日本人選手も餌食となり、昨年もパイレーツの姜正浩やメッツのテハダが大ケガを負ったことで問題となった。

 しかし、近年は安全面を重視するルールが増えているメジャーリーグ。今年から日本でも導入となった本塁クロスプレーを巡る「コリジョン・ルール」は一足先にアメリカで採用されており、今年からは二塁ベース付近でのスライディングに関しても新ルールを採用することに決まった。

 今回の一件を機に、日本でも「コリジョン・ルール」の枠が拡大される可能性というのは大いにある。今後の展開を要チェックだ。


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