偉業達成の兄の陰で...
広島の新井貴浩が、2000本安打達成まで残り「3本」と迫って迎えた4月24日の阪神戦。世間は本拠地での古巣戦で、それもアニキ・金本知憲監督の前での偉業達成へ向けて期待を募らせたが、結果は4打数2安打に終わり、あと1本届かず持ち越しとなった。
新井貴浩が注目を一身に集めた中、奇しくもその日、阪神は新井の弟・良太を一軍登録していた。太もも裏痛で登録抹消となった、西岡剛と入れ替わる形での昇格だった。
今年は開幕から二軍スタートも、ウエスタンリーグではここまで打率.310をマーク。長打率も5割ちょうどと好調をキープしている。阪神の内野の層を考えると、単純な西岡の代わりというよりは、長打力を生かした代打での活躍が期待されているのかもしれない。
ケガで離脱することになった西岡は、開幕から24試合に出場。打率.314で27安打、10打点と好調な打撃を披露しており、ケガの程度にもよるが、再登録後はすぐに復帰することが予想される。良太に与えられるチャンスは、決して多くはないだろう。
かつては虎の4番も張った
2005年のドラフト4位で中日に入団した新井良太。ちょうどその年、兄の貴浩が43本塁打を放って本塁打王を獲得する活躍を見せていたこともあり、大きな注目を浴びた中でのプロ入りとなった。
そんな中、ウエスタンでは1年目から4番で出場を続けるなど結果を残し、シーズン後半の9月に広島戦でプロ初安打を記録した。ちなみに、その試合には兄・貴浩も三塁手として出場しており、別々の球団での兄弟出場ということでも話題となった。
しかし、その後はチームのぶ厚い選手層を前になかなかアピールすることができず。中日での5年間は一軍に定着することなく、2010年のオフにトレードで阪神へ移籍する。2008年に阪神へFA移籍していた貴浩と同じユニフォームを着て戦うこととなった。
輝きを放ったのが2012年。和田豊監督の信頼を得て、一軍で4番を任される機会も。兄弟アベックホームランを2度記録するなど、飛躍の年となる。
さらに翌2013年には開幕からスタメンを勝ち取り、途中ケガで離脱するも、1年を通してほぼ一軍に定着。自身最多の119試合に出場し、14本塁打で51打点を記録した。
兄に注目が集まる今こそ奮起せよ!
和田監督だけでなく、中日時代にはあの落合博満監督から強化指定選手に指名されるなど、その潜在能力と長打力は毎年のように期待され続けてきた。
しかしながら、プロ入り以降で年間を通して活躍したといえば、前述の2012年と2013年の2年間だけ。故障などにも悩まされ、いまひとつ殻を破りきれないでいる。
持ち前の明るいキャラクターに加え、顔や体形だけでなく、バッティングフォームや喜び方まで似ていると言われ、常に兄・貴浩と比べられてきた。
若手のイメージが強かったが、今年でもうプロ入りから11年目。年齢も33歳を迎える。プロ野球選手の寿命は伸びてきているとはいえ、若手の積極起用が目立つ金本新監督のもとでは厳しい戦いを強いられるかもしれない。
最近はシーズンオフになるとトレードの噂が流れることもあり、いよいよプロ野球選手として“勝負の時期”に来ていることは間違いないだろう。
2000本安打達成で兄に注目が集まるこのタイミングでの一軍昇格、そこでもし結果を残せればアピール効果は倍増だ。兄とともに慕ってきた“アニキ”金本監督の期待に応えるためにも、数少ないチャンスを生かし、兄の大記録に花を添えたいところだ。