ニュース 2016.05.11. 19:30

社会人の名門がまさか…三菱自動車2チームが都市対抗の出場を辞退

残念でならない名門チームの出場辞退


 社会人野球の名門・三菱自動車岡崎(愛知)と三菱自動車倉敷オーシャンズ(岡山)が、今月から行われる都市対抗野球大会への出場を辞退するという。

 三菱自動車岡崎といえば、オリックスや巨人で活躍した谷佳知らを輩出したことでも知られる社会人野球のエリートチーム。2001年の都市対抗野球では準優勝に輝いた。

 三菱自動車倉敷も、前身の三菱自動車水島時代には元ヤクルトのエース・松岡弘投手らを輩出。現役では王者・ソフトバンクのブルペンを支えている森唯斗がこのチームの出身だ。

 2つのチームを出場辞退へと追い込んだのは言わずもがな、三菱自動車による「燃費データの改ざん問題」である。実際の燃費、つまり1リットルのガソリンで何キロ走るのか、という数字を机上で上方修正し、ごまかしてしまった。これを三菱自動車は10年以上もやっていたというから、問題は根深い。出場辞退は仕方がないのかもしれない。

 だがしかし、燃費の改ざんは一部のセクションがやったこと。ほとんどの社員は無関係だろう。真面目に働いていた社員が楽しみにしていた社会人野球をも奪ってしまったことになる。

 なお、三菱自動車の野球部は、広報を通じて「休部や廃部などは考えておりません。業務に支障が出ない範囲で、練習を続けていきます」と説明。最悪の事態だけは免れることになりそうだ。


社会人チームの難しさ...


 ここで考えなければいけないのは、社会人野球というのは本体の企業があって初めて成り立つ、ということだ。これまでも名門と呼ばれた社会人野球チームが、いくつも廃部や休部に追い込まれている。

 同じ自動車会社では、いすゞ自動車と日産自動車。それ以外にも東芝府中やプリンスホテル、日本IBM野洲、住友金属、NTT北海道、NTT関東、NTT東海、NTT北陸、NTT中国、NTT四国などなど...。まだまだあるが、この辺でやめておこう。

 つまり、本体が儲かっていなければ、野球部の存続は難しいということ。今回の問題により、三菱自動車の2チームが廃部や休部に追い込まれても、何の不思議もないのだ。

 三菱自動車をメインスポンサーに持つことで有名なのが、サッカーのJリーグ・J1所属の浦和レッズ。ただし、レッズは三菱自動車とは直接の関係がなく、子会社でもない。今回の問題で影響を受けることはさほどないだろう。

 サッカーでは過去にも、たとえば日産自動車=横浜Fマリノス、住友金属=鹿島アントラーズ、NTT関東=大宮アルディージャなど、関連会社やメインスポンサーの経営悪化があっても、潰れることはなかった。プロサッカーチームとしての母体が、すでにできあがっているからだ。

 しかし、もしもJリーグが誕生しておらず、今なお「日産自動車サッカー部」のままだったら…。日産自動車の野球部が廃部になったときと同じような運命をたどっていたのかもしれない。


 これまでにも、プロでの成功者をたくさん輩出してきた社会人野球。

 トヨタ自動車からプロ入りした古田敦也(元ヤクルト)や、日本石油の平松政次(元大洋)、富士製鐵釜石から山田久志投手(元阪急)などなど、プロ入りの遅れをはね退け、名球会入りを果たした選手も多くいる。

 そんな社会人野球の祭典である都市対抗野球大会は、企業やその町の関係者が「おらが町の会社」を全力で応援するという魅力あふれる大会だ。

 今回、2つの名門チームがこの大会へ繋がる予選を辞退でざるを得なくなってしまったことが、残念でならない。
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