絶好調左腕vs豊橋の神
中日は25日、今シーズン初めて豊橋での試合に臨む。相手は5月絶好調のDeNA。しかも先発はここまで今月3戦3勝、防御率0.00と快投を続ける石田健大だ。
5月4日のヤクルト戦から3試合続けて無失点投球を披露し、ここまで20イニング連続無失点。5月の月間MVP最有力候補にも挙げられる2年目左腕に対し、中日も5月11日の試合で7回無失点と封じられており、連続無失点記録に“貢献”してしまっている。
しかし、そんな厄介な相手との対戦であっても「あいつならやってくれる…」とファンが期待を寄せる選手がいる。プロ11年目の35歳・藤井淳志だ。
今シーズンは開幕戦スタメンにも名を連ね、開幕戦では2安打を放つなど活躍。ところがそれ以降は徐々に数字を落としていき、ナニータにポジションを奪われる形でスタメン出場の回数が激減。今では代打での起用が主となっている。
そんな男に熱視線が注がれているのはなぜなのか…。それはきょうの試合会場・豊橋に理由がある。
豊橋で伝説を作ってきた藤井
藤井は愛知県の豊橋市出身。豊橋東高から筑波大、社会人・NTT東日本を経て中日に入団した。
そのため、豊橋開催は藤井にとって年に1回あるかないかの地元での試合。豊橋で中日戦が開催される際には、いつも藤井のユニフォームやタオル、ボードを持ったファンがたくさん詰めかける。そんな歓迎ムードに包まれてプレーする藤井は、これまで地元・豊橋で神がかり的な活躍を見せてきた。
まずは2014年8月の広島戦。スタメン出場した藤井は攻守に躍動。豊橋のファンを喜ばせると、迎えた延長11回裏に奇跡を起こす。
一死走者なしの第5打席、広島・中田廉が投じた初球を弾き返すと、打球は大歓声の右中間スタンドへ。生まれ故郷でサヨナラ本塁打を放つという最高のドラマを演じ、球場を熱狂の渦へと巻き込んだ。
それだけでは終わらない。その翌年の5月20日、藤井は自身の誕生日に豊橋の地に戻ってくる。
ただし、この日のスタメンに藤井の名前はなく、ベンチからのスタート。これには豊橋のファンも肩透かしを食らう格好となったが、豊橋の“藤井劇場”は6回から幕を開ける。
6回裏、2-5と追い上げを見せる中で迎えた二死二塁のチャンスに代打・藤井がコールされる。待ってましたと言わんばかりの大歓声が球場銃から湧き上がる中、先発・大瀬良大地からライトへの安打を放ち、二塁走者が生還。反撃の一打を放つ。
そしてそのまま守備に就くと、4-5で迎えた7回裏の第2打席。二死二、三塁で対するは今村猛。2ボール2ストライクから高めやや外寄りのボールを逆らわずに打ち返すと、打球は左中間へ。歓声に後押しされるように伸びていった打球は、スタンドまで届いた。
起死回生の逆転3ラン。途中出場から2打数の2安打、1本塁打、4打点という大暴れでチームを勝利へと導いた男は、2年連続で豊橋のお立ち台に登り、「豊橋大好きです!」と地元への愛を叫んだ。
今年も途中出場?藤井の出番に注目!
この2年間合計で打率.571(7-4)、2本塁打、6打点。自身初のサヨナラ弾に、途中出場から起死回生の逆転3ランと、まさに神がかり的な活躍。「この男ならきっとなにかやってくれる…」と信じてやまないファンが大勢いるのもうなずける。
今年も中日の外野陣はナニータ、大島洋平、平田良介で大方固まっているだけに、スタメンでの出場は難しいかもしれない。それでも、登場した時には球場の空気が一変し、不思議なパワーが男を後押ししてくれることだろう。
DeNA・石田健大の挑戦とともに、藤井淳志の登場がいつになるか。また今年はどんな活躍を見せてくれるのか。このあとの中日-DeNA戦を見ていく上での大きな見どころとなる。